青春プレイボール!

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秋大に向けて。各自練習の日々。私も、小筆ちゃんも、先輩が抜けた穴を埋めるために必死です。選手たちには負けるけれど。
そして今日は、文化祭のための夏休み登校日。でも、野球部はみーんな行かないみたい。今年は、この時間に練習があるから素直に学校をサボれるとか。もう、いけない人たちなんだから。小筆ちゃんと、どっちか片方は行ったほうがいいとのことで、私が行くことになった。朝練を抜けて制服に着替えよう。

そして、教室にいたのが数時間前。私のクラスは文化祭で劇をやることになって。ことごとく、来ていないサッカー部の人たちの名前がメインの役に並んでいた。これは、本人たちが来たら驚くだろうなぁ、ご愁傷様です。野球部は秋大という殻に守られてるからいいものの。……あぁ、マネージャーは例外ですけどね。

けれど、問題はここから。野球部は秋大という殻に守られてる、と思っていたのだけれど、3組の友達から聞いた話。このせいで、校舎からグラウンドまでの道、頭を悩ませることになる。はたして、本人に真実を話すべきか否か。その二択をさまよっていた。
それは、3組は喫茶店をやるらしいのだけど、そのウェイターではなく、ウェイトレスが猪狩くんに決まったらしいこと。さすがに本人もいない場だし、かわいそうな気もするけど……女の子たちは大喜び、大盛り上がり。変える気はなさそう。
あっ、そうだ。まずはクラスメイトのみずきと友沢くんに話してみようかな。話したら、きっといい案を考えてくれ……くれない。たぶん、あざ笑っていじりまくって終了。
悪魔が宿ったふたりの顔が浮かぶ。日ごろ、猪狩くんに見下されているから、ここぞとばかりに……。考えただけでも怖い。やめよう。

「あ、百合香ちゃん……おかえりなさい」

「小筆ちゃん、ただいま。うちのクラスは劇だって。私たちは裏方だよ」

「ほんと? よかったあ……」

「進くんも」

「そっか、ありがとう。百合香さん」

「オイラは、もちろん主役でやんすね!」

「あ、えと、矢部くんは……石役だったかな」

「い、石!?」

「そう……ね」

真っ白になるほど落ち込んでしまった矢部くんを、1組の私、小筆ちゃん、進くんで慰める。大丈夫だよ、元気出して。ファイトだよっ。なんとか復活してほしいのに、矢部くんは色を失くして固まっている。どうすればいいのやら。……この時、すでに私の頭から、猪狩くんのことなんて抜け落ちていた。

「一軍は各自守備位置につけ!」

鶴の一声。

「なぬっ!」矢部くんの顔がガバッと上がる。「ふっ、オイラの出番でやんすね……」

復活した、っぽいね。小筆ちゃんと視線で会話を終えて、矢部くんと進くんを見送る。とはいえ、進くんは猪狩くんの球を受けるんだろうけど。
ノートを胸に抱える彼女に笑いかけた。今日もがんばりますか。気合いを注入した途端に、投げるから見てて、とみずきに連れて行かれたのだけれど。
小筆ちゃん、ごめんね。今日もベンチまわりは任せました。
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