青春プレイボール!

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へへっ、みずきに似合いそうな可愛い服見つけちゃった。私って意外とお目が高いのかも。身長もみずきの163センチに合うもの。よし、ここは買っちゃおうかな。仕送りもあんまり使ってないわけだし。
店員さんに服を差し出して、お金を払う。ちょっぴり背伸びして、包装までしてもらっちゃった。みずき、喜ぶといいなぁ。
あ、そういえば、友沢くんも部活の後にバイトしてるんだっけ。疲れてるだろうし、また甘いものでも買っていこうかな。
モール内にあるスーパーに行き、お菓子売り場を見る。何にしようかな。前はチョコだったから……。キョロキョロと見渡していると、一口サイズのクッキーが入った袋が目に入る。これなら少しずつ食べられるし、これにしよう。

さて、さっきのお店に戻りますか。紙袋とビニール袋を持って、自然に早足になる。早くみずきに見てもらいたいな。

その時でした。

迷子のお知らせを申し上げます。パワフル市よりお越しの、東野百合香ちゃん、東野百合香ちゃん。お連れの、橘みずきさんがお待ちです。至急、1階迷子センターまでお越しくださいませ。

耳を疑いました。うそ、嘘よね。私じゃないよね。同姓同名の東野百合香ちゃんっていう迷子がいるのよね、同姓同名の橘みずきちゃんって人と来てるのよね。そうよね。その子もパワフル市から来てるのよね、絶対そうよ。そうであって!
そう思いつつも、そんな天文学的数字の可能性なんて、起きるはずないって頭はわかってるわけで。は、はずかしい。はずかしさでうる、と目に涙が溜まる。

「友沢くん!」

お店に戻って彼を呼べば、当人は驚いた顔で私を見てるわけで。

「東野、な、泣いてるのか……?」

「そ、それより! 今の迷子の放送って……」

「ああ、橘がさっき……」

……一筋、いや、そんなになかったな、一粒の希望が絶たれた。今日はあおいちゃんとはるかちゃんも、ショッピングモールにいるのに!

「わああ、いや、イヤ……!休日なんてきっと学校の人もいるだろうし……もう学校に行けないし、お嫁にも行けないよう……!」

「よ、嫁なら俺が……じゃなかった! 泣くな、大丈夫だから」

「どうして携帯に連絡してくれなかったの……!」

「はっ、その手があったか」

「……もう、友沢くんのバカ! きらいっ!」

「き、きらい……」
   
彼にビニール袋を押し付けて、私は泣きながらお店を出た。その後、みずきに携帯で連絡して合流し、彼女にも紙袋を押し付け、これまた泣きながら帰った。
でも、帰ってる途中で、後悔して。パワ堂のプリンを2つ、買って帰った。
夜、家のインターホンを押したのは彼女。
手に、綺麗で私の背にぴったりなブラウスとスカートを持っていた。私の家で晩ごはんを作って食べ、プリンでなかなおりしたのは、また別の話。……三日月のイヤリング、つけっぱなしにしておいてよかったな。
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