青春プレイボール!
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他の人からの拍手喝采を受けたバッティングセンターを出ると、時間も時間。すでに空は、完全に夜と呼べるほど暗くなっている。クリスマスもいよいよ本番ってところなのかな。たくさんのカップルが手を繋いで寄り添い歩く。私たちも、そう、見えたらいいなあ。なんて。
「東野」
「は、はいっ!」
ひとり、変なことを考えていたから、お仕置きでしょうか。すっとんきょうな返事しかできず、すぐに口を塞ぐ。でも、一度出てしまった音は、友沢くんの耳に入っていて。彼は、こらえきれないように、顔を下げて震えた。
「くく、どうしたんだ」
「な、なんでもない。それより、そっちこそなにか話そうとしていたよね」
こちらを隠すように促せば、彼はああ、といつものように口元を引き締めた。
「飯、行かないか」
こくりと頷く。ふたりでご飯を食べに行くなんて。ぽ、と身体は正直だ。そこから、お店を探すのかと思いきや、友沢くんは、なぜかちらちらと私を見やる。
「……どうしたの?」
「いや、い、猪狩さんみたいな場所には連れていけないが……それでも、構わないか?」
彼が、とてもかわいらしく思えた。きっと、以前、猪狩くんと、みずきとの4人で、高級そうなレストランに行ったことがあるからだろう。そんなこと、気にしなくていいのに。友沢くんは、私にとって特別なひと、なんだから。……どこに行っても、ステキな場所になる。そんなこと、言えないけれど。
「構わないよ、私だって庶民なんだもん。猪狩くんが行きそうなところに行ったら緊張しちゃうよ」
「……そうか」
友沢くんはうすく微笑んで、私をお手軽なファミリーレストランに誘った。もちろん、とそれを受ける。ふたり、肩を並べてはいるけれど、私はどこか、身体が浮いたような心地だった。そわそわ、というのかな。
そんな浮かれたまま、小さなレストランに入って、通された席に置かれたメニューを開く。お腹はそんなに空いていないけど、とにかくこの寒空の下。なにか身体を温めるものが欲しかった。
優柔不断というわけでもない私は、写真に多すぎず少なすぎない量が載っていたコーンポタージュを即決。友沢くんも、同じようなタイプらしく、お互いのメニューを決めることに時間はかからなかった。
「東野、寒かったのか?」
「まあ、冬だからね」
「……俺がしっかりしていれば」
そんなこと、思う必要はないのに。コーンポタージュを頼んでから、申し訳なさそうにする友沢くん。頼りになる長男なんだろうな。緩みそうになる唇を、ウェイターさんが運んできてくれた水を飲むことで隠した。