番外編

□友人のピンチ
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セキュリティガード高校、略してSG高校とかいう高校の偵察。監督から割り振られたのは、コイツ、口が減らない女、橘との偵察だった。野球をメインに活動しているわけではないからか、野球をするとは思えないほど恵体の選手が多かった。昼も回り、エネルギーのない頭で思い浮かべていたころ、前方に見覚えのあるふたりを見かけた。猪狩さんと東野。たしか、覇道高校だったか。あのふたりは。

「おい橘」

「なによ」

「東野がいるぞ」

彼女の野球部への入部動機である橘に声をかけると、さっきまでつかれから沈んでいた顔が一気に晴れ輝き始めた。本当にこいつらは仲がいいらしい。
しかし、東野の腕が猪狩さんにとられたことで、俺と特に橘の間に緊張が走った。東野と仲がいい橘は、心配そう……というより、忌々しげに猪狩さんをにらんでいる。まあ、たしかになにやらあやしい雰囲気。猪狩さんが少し前にのめり、その分、東野が後ろに引いている。猪狩さんが、東野の腕を握っていたと思えば、彼女が払っていて。するとまた俺より白くて細いそれが焼けた手の中におさまる。

「……なに? 猪狩ってそういうしつこいタイプなワケ?」

橘の目は異様に殺気立っている。友人がこういう立場に置かれているなら、わからなくはないが。俺もいち友人として、どこか見過ごせない気持ちになっている。
そのとき、猪狩さんと東野が高校と別の方向に動き始めた。まさか、東野が嫌がっているのを、猪狩さんが無理に。これにはさすが橘、「早く助けなきゃ!」と、すぐに反応を示してかけていった。俺も走り出す。もちろん橘よりは俺の方が速い。後ろで走る橘も来るだろうと思いつつ、スピードはそのままに猪狩さんと東野の間に割って入った。

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