青春プレイボール!
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「うぬぬぬ、なんであんたも来るのよぉ……」
「それはこっちのセリフだ。明らかに邪魔はお前だろう」
「まあまあ、元旦くらい仲良くしようよ……」
みなさん、あけましておめでとうございます。そう言いたいところですが、困ったことにふたりがさっきからこの様子なのです。ひとりは私の親友、もうひとりは私の好きなひと。最近、このうちのひとりと関係が変わったとはいえ、このふたりの関係は変わらない。
歩幅を小さくしないと動くこともままならない人ごみ。なんとかお賽銭箱の前に来ることが出来て、財布を取り出す。今年も、ご縁がありますように。あら、その前に5円がない。しかたなく同じ穴が開いたもの同士の50円を入れて、手を合わせる。
野球部が、甲子園に行けますように。
「大丈夫そうか?」
「うん、お願いごとはしたよ」
「百合香、何を頼んだの?」
「ふふ、ひみつ」
言ったら、願いはかなわない。いや、これは自分たちで掴みにいくものなんだろうけど、ね。私の腕を引いた友沢くんの後ろをついていく。こんなときでも、彼はとっても頼りになる。……みずきはむくれていたわけだけど。
神社を出ると、人の数もぐんと減った。動きやすくなった身体で背伸び。ぽき、と小さな音がした。
「あ、百合香ちゃんでやんす!」
「げ、みずきちゃん……」
「あけましておめでとう、ふたりとも」
「げってなによ、げって!」
「お前たちは、女しか見えてないんだな……」
葉羽くん、矢部くんのふたりも来ていたんだ。葉羽くんは、青い顔をしていて、きっと25日のことだろうな、なんて推測。みずきが葉羽くぅん、と甘い声ですり寄って行く。矢部くんがうらやましいでやんす、と嘆いているけど……どうなのかしらね。
がんばれ、葉羽くん。みずきにほっぺたをつつかれている彼にひっそりエールを送ると、友沢くんとつながった手。
「そうだ東野」
「はい?」
「来てくれ」
返事をする間もなく、私と彼はその場から消えた。背後から葉羽くんに囁いていたものとはほど遠いみずきの怒号が飛んできたけれど、足の速い友沢くんには届かなかった。神社の中じゃ、こうはいかなかっただろうな。