青春プレイボール!

□23
1ページ/3ページ



3学期が始まったけれど、正直に言ってしまえば、3学期なんてあってないようなもの。そう思ったことはありませんか。

事実、消化試合のごとき授業のつまらなさ。

実はですね、パワフル高校は野球に力を入れているから、もうすぐ野球部は合宿がスタートするのです。ですが、そうすると、野球部だけ学年末試験を受けられない、または勉強ができないという問題が発生します。そこで、なにを考えたのか。この高校には、学年末試験が存在しないのです。
そのかわり、3学期の成績は授業態度がモノをいいます。言い換えれば、それしかありません。そのうえ、1学期、2学期とは違い、成績が悪かった人は春休み中に補習があるのです。

だから、ほら、見てください。

いつもは机とおでこをごっつんこして寝ているみずきや、あそこの、えーっと、なんだっけ。あ、そうそう。パーティーピーポーな男の子たちも、背筋が伸びています。ノートも開いています。

じゃあ、なぜ授業がつまらないか。

簡単なお話です。後ろを見てください。あそこにいる、金髪サングラスさん。そうです、あの人です。彼、目は開いてますね。はい。でも、どうですか?授業、聞いてそうに見えますか?ええ、ええ。私も、彼が授業を聞いてそうには見えません。けれど、寝ていない。これだけで、授業態度はマルなわけです。つまり、3学期の授業は、勉強というよりも睡魔との戦いなんですよ。
ですから、前の席、黄緑色の髪の女の子、そうです。彼女です。後ろから見てもわかります。あのシャーペンの動き、とてもノートをとっているものではないですよね。きっと、絵を描いているのでしょう。

まとめるとですね、3学期の授業は、各自寝ないための手段に必死になるわけです。私ですか?私は、眠くならないようにノートを細かくとるようにしています。今、えらいと思いました?それが、そうでもないんです。
授業態度は人よりいいと自負してますが、成績はいつもいつも平均。平々凡々なので、これくらいしないとダメなんですね。

「はぁ……」

もう少し、要領のいい人になりたい。勉強と部活の両立で精一杯だ。文武両道というわけではない。私はマネージャーだもの。体育の成績は、10段階評価で5。

「百合香ー、どうしたんだ? キョロキョロしたり、ため息ついたり」

「ハッチ……いや、ちょっとね」

「あー、さてはあれだろ! 寝ないための体操だろ?」

「……あなたじゃないんだから」

周りには何かに突出した、才能を持った人ばかり。あ、これを友沢くんに言ったら怒られるから、彼は抜いておこう。一方、私はない。すべて一般レベル。抜きん出て苦手なものがなければ、秀でたものもない。

「ねえハッチ」

「なんだ?」

「私の強みってなに?」

「百合香の強みか……。うーん、なんだろうなあ。あ、セッちゃん」

「なにかしら」

「百合香の強みってなんだ?」

「そうねぇ……。ねえ、チカちゃ」
「もう結構ですありがとうございました」

私は、個性がなく、平凡な人間だって再確認できました。がっくり。授業に戻って、先生が板書したこと、話したことをノートにまとめる。
愛犬の話?あ、休憩タイムですね。書いたノートでも振り返ってよう。
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ