青春プレイボール!
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我ながら、ダイタンなことをしたと思う。
だからか、その反動はとても大きい。
「ふっふーん、プーリンケーキっ、プーリンケーキー!」
「…………」
「キャーッ! 百合香っ、ぷ、プリンケーキがっ、こ、こげてるよぉ!」
「……え? わあ! な、なにこれ、気づかなかった!」
「……モッタイナイ」
「つ、作り直すから、ね」
こんなことがあったり、
「百合香、あおいさんと葉羽と矢部とクレッセントムーンの練習に行ってく……なにしてんのよ」
「……あ、みずき」
「洗濯物、たたまないの? 膝に乗っけたままだけど」
「ああ、うん、たたむよ。たたむ」
そんなことがあったりしました。
そして、今。
新年明けましておめでとうございます。そんな明るい雰囲気で、みずきと神社まで来たというのに。
「ま、間違えて五百円玉入れちゃった……」
「最近、エラーだらけだね。百合香」
なんと、五円玉を入れるつもりが五百円玉を入れてしまったのです。神様の前でこんなことを後悔するなんて罰が当たりそうだけど、後悔せずにはいられない。一人暮らしに経済問題はつきものです。
でも、入れてしまったものはしかたもなく、お賽銭箱から離れて人波をくぐりぬける。
彼女の言うとおり、ここ何日かはミスばかりだ。理由はわかっているんだけどね。はあ、と本日何度目かの重いため息をついた。
そんな時、私とみずきの名前が呼ばれて。音源を振り返ってみると、青い髪をなびかせながら微笑む星井くんと、豪快に笑う木場くんがいた。
「むっ、覇道のヤツら!」
「んだと!」
「木場、よせよ。ふたりも初詣かな?」
「うん、そうなの」
みずきの一触即発な態度にも、この対応。やっぱり星井くんはここにいるべき人なのだと再確認したところで、彼は私を目に映した。
「そういえば、秋大の後にお礼が言いたかったんだ。本当にあの時はありがとう」
「そんな、私より猪狩くんだよ」
「そういえば、君と猪狩くんは仲違いを起こしたって葉羽から聞いたけど……」
男の子にしては細めで形のいい眉がきゅっと寄せられた。私より断然女の子らしい顔をしてみせた星井くんに、雅を思い出す。どうしてこうも、神から二物を与えられた人が多いのだろう。めまいがする。
「うん、もう大丈夫だよ。仲直りしたから」
「そっか、よかった」
「ちょっとぉ、星井と百合香の間になにがあったのよ?」
「猪狩くんと東野さんとのおかげで、僕の新変化球を編み出せたんだ」
「なっ、東野! お前、スタードライブに関わってんのか!?」
木場くんが私にずい、と寄ってきて。新変化球という言葉に、みずきのくせっ毛がぴんと立ち上がって。
ああ、これは何か起こるな。めまいと一緒に寒気がした。
案の定というか、なんというか。みずきは星井くぅんと猫の耳が生えたような声で、彼にすりすりと上目遣い。カワイイ見え方を熟知している彼女に、星井くんも木場くんも痛そうなほど瞼を開いて頬を染めるのは無理もない。
「たっ、橘さん!?」
「私にもぉ、その変化球教えてほしいなぁ」
「な、な、星井テメェ!」
「いや、どうして僕に怒るんだ木場! 東野さんなんとかしてよ!」
「星井くぅん、だめなの……?」
「……無力なものでごめんなさい」
苦笑いしか出てこない。犠牲者はこうして生まれるんだろうな。ビシッとお手上げを決め込む星井くんは、完全に痴漢冤罪対策のサラリーマンだ。
葉羽くん、友沢くんに続いて星井くん、そして木場くん。彼女の小悪魔っぷりにも脱帽だけれど、男の子は単純な生き物なんだなあなんて感心せざるをえない。
けれど、言うなればみずきは野球のことだからここまでするのだ。そう思うと、小悪魔な彼女を野放しにしてしまう私は甘いのだろうか。星井くんの救助要請を笑顔で水に流すあたり、伊達に彼女の親友をやっていない気がした。