一日一アプリ

□形のない愛を吸い続ける
1ページ/1ページ

「史門くんはあ、美砂ちゃんが好きなんだあ」
「い、いや、そういうわけでは……!」
 転校してきたこの男、史門一族として有名なヴァンパイアハンター。隠しているようだけど、その名前といい美砂に擦り寄る姿といい、彼がヴァンパイアハンターだなんてバレバレ。そして、かく言う私もヴァンパイア。美砂とは同業者ってわけだ。でも、私はちょっぴり今の生活に飽き飽きしていた。つまるところ、刺激が欲しい。
 そこで、私はコイツと殺るか殺られるかの恋がしたいのよ。魅了能力に長けたサキュバス型ヴァンパイアの私なら、この男をメロメロにするのも朝飯前、というより吸血前なはずなんだけど、どうも史門は美砂以外に寄る気はなさそう。
 しかも、厄介なことに美砂は彼が私のターゲットだということをわかって、付かず離れずの距離を保っている。彼女はあまり敵に回したくないから、放っておくのが吉だろう。そんな野球部も今日は休み。今は彼女もいない。だから、決めたの。強行策。
「ねえ、私じゃダメなの?」
「そんな! 名前さんも大変可憐だと思っていますよ!」
 彼と私しかいない教室、そっと来ていた制服のリボンを解いた。指先だけで、やんわりと。史門は私の指に釘付け。あらあら、ヴァンパイアハンターじゃなかったの? 一般男子高校生みたいな反応しちゃって。カワイイなあ。まだリボンだけじゃない。見えているのは鎖骨くらい、これじゃあサービスが足りないよね?
「ウフフ……もっと、見たい?」
 ゴクリとわかりやすく息を飲んだ史門は、よもやヴァンパイアに迫られているとは思っていないのよね、素敵。気づいたらどんな反応をするのかしら。殺しちゃうのかな? それとも、今よりもっとスゴイコトをすれば、許してくれちゃったりするのかしら?
 史門の目を離さない指で、私はシャツを下から捲った。お腹だけが外気と彼に剥き出される。ここまで生身のヴァンパイアを目の前に置いておきながら、彼は私に魅了されているの。ああ、なんてカ・イ・カ・ン。
「史門くんがいいって言ってくれたら……サービスしちゃうのにな」
「さ、サービス……!? それはどんな……あ、いや! 私はまず、健全な関係をですね……!」
「私とこうなるの、イヤ?」
 史門の胸に擦り寄れば、彼の顔は見事に真っ赤、リンゴも逃げ出すような色に染まった。しかも、鼻の下までちょっぴり伸びているの、お見通しよ。あともうひと押し、私はその首筋に息を吹きかける。このまま噛み付いてしまいたいけど、今はダメダメ。時期尚早だわ。
 しかし、間違いなくわかったことがある。この男、落ちたわね。理性に打ち勝てず、私のサキュバスの餌食になった彼は汚らしく私のシャツに手をかけた。これから、ちょっとは楽しくなりそう、ね。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ