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□蜘蛛の糸(跡蔵)
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「男の体がこんなに熱いなんて、初めて知ったぜ」

肌の上で、熱が伝う。

「俺かて、初めてや」

熱を孕んだ眼で、白石が跡部の上に乗っている。

そうだ。

白石が逃げようとすればいつでも逃げられるように、跡部は白石を腹の上に乗せていた。

それなのに、白石は逃げなかった。

「跡部クン、…俺、変や」

このとき白石の中に湧き上がった感情を、跡部は知らない。

妹を裏切る行為。

跡部の吐き出す熱。

男同士のセックス。

「なんで、俺とシたん?」

「おまえ、可愛いから」

即答した。

問われることを予期した問いだった。

理由付けなら、いくらでもできる。

けど。


『本命は、おまえだから』


たったひとつの本音だけは、言わない。
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