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□★不埒な純情(跡蔵)
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「跡部、チョコレート全部よう断ったなぁ」
忍足の台詞に反応したのは、跡部ではなくその隣を歩いていた白石だった。
「え、何。白石は知らなかったん?」
涼しい顔をしている跡部をあんぐりと見つめて、白石はいつかの跡部の台詞を反芻していた。
『バレンタインに全部チョコ断ったら、代わりにおまえが俺のモンになるんだぜ』
始めは冗談だと思っていた。
「跡部クン、…」
答える代わりに、跡部は白石の手を掴んで自分のコートのポケットに入れた。
中で恋人繋ぎに指を絡められ、白石は忍足の目線を感じて小さく俯く。
「純情やんなぁ、跡部にしては」
「煩えよ、忍足」
ようやく口を開いた跡部が、軽口を叩く忍足を軽く睨む。
それでも繋いだ手を放さない跡部に、白石は今知らされた事実とともに赤面せざるを得ない。
──もし俺がチョコ全部断ったら。
途端に、この先に何が待ち受けているかを体が敏感に察して下腹部に熱が集まる。
白石はちらりと跡部の横顔を見やった。