NOVELS


□サトラレの恋 序章 【サトラレ】
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サトラレ保護活動の概要は、

・サトラレを社会に迎え入れるための啓蒙。

・サトラレがサトラレだと自覚せずに一生を終えるための保護、観察。

この二点である。


啓蒙活動は、映画や小説など、フィクションに絡めた形で大々的に、かつ繊細に行われていた。
また、サトラレが一歩社会に出る際には、管理者によるサトラレ周辺への教育が施された。


彼らの存在が一部の重要人物たちの知るところとなった時、人類の新しい種
として研究がなされたが、サトラレは自分が新しい種であるという事を喜びを持って認知する事はなく、一様に狂気に落ちるか、自死の道を選んだ。

稀にしか産まれない研究対象が次々と壊れたり死んだりしたのでは困る。

科学者はサトラレの保護を求めて各国に働きかけた。

こうして、研究を目的とした保護活動は世界の各地で極秘裏に進められてきたのである。



さて、双葉かんなである。

彼女は2歳で医師からサトラレと診断された時から、国の保護対象として生きてきた。

幼稚園に入るまでは普通の子供と変わらずに育てられたが、そこからは常に管理者が身近にいて、彼女を守り、観察し、助けてきた。


かんなはエリートを育成する、小、中、高、大学までエスカレーター式の
私立に形だけの面接試験をパスして入学し、担任となった管理者と、かんなに対して悪意を持たない同級生に囲まれて、ごく普通の学生生活を送った。


教師と生徒達のかんなへの寛大さは見事なものだったが、それも、徹底した管理者からの指導とある種の国からの脅迫が成せる業だったと言える。

かんなを嫌い、かんなを苛めた、とある女子生徒は、どこからかの圧力で転校を余儀なくされ、町にもいられなくなり、夜逃げ同然に転居していった。


そんな話がかんなを除いた生徒達の間に広まり、それは大人にも伝染し、彼らが「サトラレの保護」の意味を知ると共に、かんなは伸び伸びと10代の青い春を満喫できたのである。
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