平和な世界で
□変わらぬ心結
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「おれはレイ、よろしく」
「…ケンシロウだ…」
何故…何故なんだ…
「ケンシロウか、隣の席だから気軽に話し掛けてくれ」
レイ…お前はこんなにも近くにいるのに…おれが分からないのか…苦しいほどに愛しいお前に触れられないのか…
「ああ……」
ーー
ー
桜が満開の季節…だが、不幸にも雨が降る日になった、高校の入場式…
傘を持たずに佇む学生がいた。
「……………レイ…?…」
ケンシロウは目を見開いた、中庭で濡れても尚、空を見上げる彼の姿に…
「…………?…」
彼はケンシロウの気配に気付き、視線を向ける。
そして、一瞬目を見開いたのが見えた。彼はケンシロウに背を向け、歩いて行ってしまう。
「レ…ーーーーー」
呼び止めようとしたケンシロウの声は雨音に遮られ、届くことはなかった。