好きな人。2

□Episode 1
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「やっぱおらへんよな」


期待はしてへんかったからなんも思わへん。
彩さんが来てくれるはずないもん


彩さんは東京に上京してすぐにデビューが決まって、この1年でアルバムを出して歌番組に引っ張りだこやったらしいし
そんな忙しい人がこんな約束覚えてくれとるはずもないねんな。


去年は彩さんに急かされて全然脱げへんかった靴とくつ下。
今年はすんなりと脱げてん。


この季節の海はやっぱり冷たいねんな
去年はそんなことあらへんかったのに。


去年はあった大きい丸太も今年は無くて、去年よりすこしゴミが多い砂浜


全部が去年とは違う。













変わらへんのは私からの気持ちだけか…


なにもする気にならず、帰ろうとも思わへんからとりあえず制服のまま砂浜に倒れた


『あたしは絶対1年後も名無しのこと好きやから』


なんて言うとったのに。
彩さんの嘘つき。
どーせ東京で恋人作って私のことなんかもぉちっぽけもおもってへんのんやろ


「っ〜。ばかっ、」


なんで涙が出てくるねん!
あのモテる彩さんが1年も私のこと思ってくれとるわけないやんか

わかっとるのに…












「帰ろ…」


結局日が暮れるまでおったけど、彩さんどころか誰もこーへんかった


ちょうどバスが来るのが見えて急いで靴とくつ下を履いてバス停まで走った


「きゃっ…」


運動音痴が砂浜で走るとこーなるねんな。
砂に足を取られて見事砂浜にダイブしてしまった

バスはバス停でとまったけど私を待たずに発車してしまった


「もぉいやや…」


もうなにもかもいやや。


「ん」


目の前に手が出てきてびっくりして顔を上げると去年より髪が伸びて100歩譲ってもカッコイイって言えへんくらい大人っぽくなった彩さんがおった


「なん、で…」

「やっぱあたしがおらへんとあかんねんな」

「さやかさん。」

「遅くなってごめんな」

「うぅ。。」

「ほら、もぉ泣かへんの」


涙がどんどん溢れてきてボロボロ泣く私を力強く抱きしめた彩さん


「待たせてごめんな」

「ほんま、来るの遅いねん…!!」

「うん。ごめん。」

「もぉ私のことなんか好きやないんかと思った」

「あたしも名無しはもぉ恋人作っとるんやろーなって思っとったで」

「私はずっと彩さんのこと考えとったで?」

「あたしも何回あんたに連絡しようとしたことか」


私達、離れとってもちゃんと想いあっとったんや。


「卒業おめでとう」

「デビュー、おめでとうございます」

「あたしが出とる番組見てへんのんやろ?」

「え、どうして!?」

「山田から聞いた」

「菜々さんか…」

「山田とめっちゃ会っとったんやろ
名無し元気にしとるでとかよー来たわ」


頼んでないっちゅーねん。なんていいながら笑顔になる彩さん。


「あ、せや!」

「おぉ、どしたん?」

「彩さんに報告があんねん!」

「あたしに?」

「私、東京行くねん!!」

「東京?」

「東京の大学に行く!
そしたら彩さんと会いやすいやん!」

「もしあたしがここにこーへんかったらどーすんの?」

「それでも東京に行く」

「名無し…」

「やから、彩さんの家の近くに家を借りようと思ってるんですけど…迷惑ですか?」

「あかんなぁ」


やっぱりあかんよな…
そんなに近くにおられたらいややんな。


「近くが迷惑やなくて、家借りるのがあかん
一緒に住めばええやん」

「え!?」

「あたしん家、広いねん。
名無しと一緒に住もうと思って広いのにしてん
やから、一緒に住もうや」

「は、はい!!」


continue...
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