恋を

□好きやけど
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「山田」

「あ、さやか!」


男たちに囲まれとる中心の人物に声をかけるとサッと周りに散っていき、あたしの顔を見て笑顔になる山田


「ほんま変わらへんな」

「なにが?」

「学生の時から
山田は囲まれて、あたしが声掛けたらみんな散っていくねん」

「彩の格好が男っぽいからやろ」


学生の時から山田と待ち合わせする時は必ずと言っていいほど男たちに囲まれとって、あたしが声をかけると嬉しそうな顔で駆け寄ってきとった
それが、嬉しくて、やっぱ好きやなって毎回思っとった


「それで、話って何?」

「あーまたゆっくり話すからとりあえずどっかいこーや」


卒業しても、山田とは仲良いし、タイミングあえば遊びにも行くし、他の子誘って飲み会だってしとる


「で、どこ行くん?」

「見たい映画があんねん!」

「映画かぁ
最近は見てへんな」

「やろ?行こ!」


あたしの腕を組んで映画館まで歩く山田
相変わらずなんやけど、胸に当たっとるんやけど…


「ベタな映画やったな」

「それがええんやろ?
ほんま彩は分からへんなぁ」

「展開わかるやん」

「キュンキュンするやん」

「次どこ行くん?」

「いつもんとこ」


自販機で飲み物を買って、学生の時からよく行っとった公園のベンチに座った

ここがあたしらのいつものとこ。


「手、繋いでいい?」

「え?」

「ん」


出された山田の手に自分の手を重ねると嬉しそうに笑って指を絡めてきた

今までずっと言わんでおったけど、今日こそ告白してもええよな…?


「なぁ、やまだ」

「さやか」

「…なに?」


一瞬寂しそうな顔した山田が繋いだ手を引っ張って顔が近づいた

キスしそうな距離、なんて思っとると目を閉じた山田に唇を奪われた


「なっ、!」

「彩のこと好きやった」

「あたしも、好きやで」

「ふふ、両想いやったんや」

「ならあたしと付き合おーや」

「無理やねん」

「なん、で…」


さっき自分からキスしてきたやん

なんで山田がそんな泣きそうな顔するん


「私、結婚すんねん」

「は?」

「半年後」

「うそ、やろ?」

「ほんま
招待状送っとるから、来てや」


ずっと好きやった奴の結婚式に?
行くわけないやろ


「行かへん」

「え?」

「好きなやつの結婚式には行かへん」

「さやか。」

「なんやねん」


あたしの手を握る山田


「ずっと好きやってん」

「あたしやって、好きやったわ」

「うん」

「やのに、なんで…」


勝手に決めて、勝手に婚約までしてんの

ほんまに昔からあほやで、山田は


「彩が男の子やったら良かったのにな」

「っ、あほ」

「ずっと好きやった」

「うん」

「さや、か…」

「はよ行き」


今あんたの顔みたらあたしは多分泣くから
お願いやから1人にして

ほんで、絶対幸せになってな


「来世では幸せにさせてや…」


歩き出した山田の背中に呟いた


-END-



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