しちゃいました

□卒業の前に
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「さや姉、次名無しのハート型ウイルスやで」


名無しっていうのはAKBさんから移籍してきた関西出身の高3の子なんやけど、とにかく可愛くてメンバー人気が高い子やねん
あたしも好きな1人なんやけどな


朱里が教えてくれて着替えの途中やけど中断してモニターを見に行った


「名無しちゃんめっちゃ似合っとるなぁ」

「名無しさんかわいい」


他のメンバーも集まってきとって、みんな名無しにくびったけやった


「次のセリフ、名無しめっちゃ悩んどってん」

「え?」


朱里が言うた意味がわからへんくて聞こうと思ったら名無しのセリフが始まってしまった


「絶対にありえへん!そう思っとったのになんだか私、さや姉の事が好きみたい」

「は、」

「結果それにしたんや」


みんなから一斉に視線を向けられたけど、そんなことよりキョトンとモニターを見つめてしまった


「…朱里、さっきのなんなん?」

「え、ちゃんと聞いてへんかったん?」

「聞いとったで
やけど、さや姉って言うたような気がするねん」

「ならそーなんやない?」

「おい、朱里!」

「朱里はなんも知らへんもーん
気になるんなら本人に聞けばええやん」


セリフの意味がわからへんくて、朱里に聞けば本人にって言って後ろを指さしたから見てみると終わってはけてきた名無しがあたしの顔を見て照れ笑いして着替えに行った


「彩さん、そろそろ着替えな間に合いませんよ」

「あ、すぐ行く」


メンバーに言われて名無しが入っていったところに入って名無しを探した


「名無し、さっきの良かったやん」

「朱里ちゃんが一緒に考えてくれたから」

「でも最終的に決めたのは名無しやで?」

「んーん、朱里ちゃんが考えてくれたのを言っただけやで」

「やけど、ほら
本人には効いたみたいやで」

「あ…」

「ほら、行ってき?」

「まだライブ中やから終わったら、な」


朱里に背中を押された名無しはあたしのところに来ずに着替えに行ってしまった











「お疲れー」

「お疲れ様です」


反省会も終わってメンバーが帰っていく中、あたしは名無しを探した


「あ、朱里」

「まだ帰ってへんかったんや」

「名無し探しとって…」

「あー名無しならスタッフさんのところにおったで」

「ありがとな」

「ほな、明日も頑張ろな」


メンバーは明日のライブに向けてどんどん帰っていくのに名無しはなに話してるんやろ…


「名無しちゃん、それでええの?」

「はい」

「名無しちゃんがええならええんやけど、名無しちゃんの卒業は痛いなぁ」


え…?
名無しが卒業?


「まだ半年くらいますよ?笑」


まって、頭がついて行かへん。
名無しが卒業?
まだ発表してへんってことは明日?


「あ、さや姉」

「卒業ってどーゆーこと?」


目が合った名無しがこっちに歩いてきた。


「聞いてたん?」

「明日か?明日発表するんか?」

「うん。その予定でおる」

「なんで…」

「学業、かな」

「夢は?
あんたの夢はどーなんねん」

「相談しやんでごめんなさい」


しゅんっとなった名無しにハッと我に返った


「あたしも悪かった。
ほな、明日も頑張ろうな」

「あ、ちょっと待って!」

「なに」

「さや姉に話があんねん」


その場を去ろうと踵を返した時に名無しに腕を掴まれて元に戻った


「…」

「ちょっと、2人っきりにならへん?」

「わかった」


名無しに連れられて人気のない階段に来た


「私、さや姉が好き。」

「…何言うてんの、恋愛禁止やで」

「うん
やけど、伝えたかってん」


まっすぐ見てくる名無しを見れへんくて目線を逸らしても分かるくらい見てくる


「別にどーこーなりたいってわけやないから気にしやんといて」

「気にしやんといてって」

「ほんまに伝えたかっただけやねん」


はー緊張したーって大きく伸びをした名無し

なんでそんな普通でおれるんやろ。


「これで心置き無く卒業発表できるわぁ」

「名無し」

「まだ半年はおるから、その間は仲良くしてな?」


ニコッと笑ってあたしの手を握ってきた名無し。

明日がこーへんかったらええのに…


-END-


山本さんは卒業する名無しさんのことを思い、自分の気持ちに蓋をします。

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