しちゃいました

□好きの違い
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「夢莉」

「あ、ごめん
なんだっけ?」


いつから夢莉の目に私は映らんくなったんやろ。

夢莉と付き合って3年
恐れとったことがとうとう来てしまった


「今日の夜、うち来るやろ?」

「あー、今日はちょっと」

「…そっか」

「あ、彩ちゃん」

「こんな所でなにしとるん?」

「話してただけです」


いつの間にか夢莉の目には彩さんしか映ってへんくて、それに気づきながらも私から別れ話なんかできひんかった


「名無しもゆーりもラブラブやなぁ」

「もぉ、冷やかさんといてください」

「ほんまですよ」

「あー熱い熱い笑」

「もー彩ちゃん」


全然ラブラブしてへんのに彩さんにからかわれて、夢莉がそのまま彩さんの隣を歩いていった

そろそろ別れ時よな…


「名無し?」

「ぁ。」


さやゆーりを見ながら考え事をしとると愛梨さんの顔が目の前に広がった


「何難しい顔してんの?」

「あーちょっと、トイレ行こーかなーって」

「我慢は良くないで?」

「はい
ほんなら行ってきますね」


愛梨さんに見送られて楽屋を出たけど、向かう先はトイレとは反対方向


ー今から自販機の横に来れる?


夢莉にLINEを送って少し待つと、走って来てくれた


「待った?」

「いや、べつに」

「なにか話があるの?」


整った顔で聞いてくる夢莉。


ほんまに美しいな

今まで私と付き合ってくれとったのが信じられへんくらい、どんどん綺麗になってくな


「別れよっか」

「え?」

「夢莉が好きなのって彩さんやろ
それ分かっとって付き合っとくの、もう無理や」

「名無し」

「彩さんも夢莉のこと好きやと思うし、幸せにしてもらってな」

「ちょ、名無し!」


夢莉に背中を向けてトイレまで走った


トイレに着く頃には涙でほっぺは濡れとるし、息あがっとるしで、鏡に映る自分は見れたもんやなく、隠れるように個室に入った


「青いホースで水を撒こうか」


夢莉のセンターの曲が好きで、真ん中で輝いとる夢莉が好きで、私の事分かってくれとる夢莉が好きやった。


「突飛すぎる行動」

「え?」

「次、名無しやで」

「なんでここに」


なんで彩さんが…

夢莉が楽屋に戻ったはずやのに。
せっかく夢莉が告白して両想いに気づいて付き合うはずやのに。


「さっきダッシュで走っていくの見てん
心配やから来てみた」

「だからって」

「ほら、続き」

「…確かに僕は君が好きだ」


彩さんに言われて歌ったけど、今はそれどころやない


「空に向かってくるくる回りミストのように」

「日差しの中で煌めく」

「僕の大切なものが」

「ほら君に架かる」

「虹になる」


一応最後まで歌ったけど、出るタイミングが完璧になくなった。


「ゆーりと別れたん?」

「は、はい」

「ほんならあたしがもらっていい?」

「…そのために別れました」

「そっか」


面と向かって言われると悔しいけど、仕方ないことや。
夢莉が幸せになれるなら


「夢莉のこと、幸せにしてあげてください」

「ちゃうくて」

「え?」

「名無しのこと、もらってもいい?」

「へ!?」

「あたし、名無しのこと好きやねん」

「なななな何言うてるんですか!」


彩さんも夢莉も両想いやから、それなら夢莉が幸せになれると思って別れたのに、!!


「そろそろ出てこーへん?」

「むむむむりです」

「なんで?」

「顔ぐちゃぐちゃやし、、」

「見せて」

「汚いしむりです」


じゃなくて!!


「夢莉のこと、好きやないんですか」

「好きやで」

「ほんなら夢莉と「ゆーりはメンバーとして。やから付き合うことは出来ひん」…なんで」


彩さんが分からへん…

とりあえずメイク直さんとやし、出なあかんけど。


「恋愛感情あらへんのにゆーりと付き合った方がええの?」

「それは、、」

「そっちのがゆーりのこと傷つけるやろ」

「とりあえず、トイレから出るんで戻っとってください」

「なんで?」

「見られた無いからです」

「見せてや」


こんなぐちゃぐちゃな顔見せれるわけないやん!!

やけど、出んとほんまにメイク直されへんくなりそうやし…


「とりあえず出るんで見んといてください」

「頑張るな」


そーっと個室から出ると彩さんに頭からタオルをかけられた


「見られたないんやろ?」

「はい」

「ほんなら、目つむる」

「??…ぇ、」


両手を頬に添えられて意味わからんくて固まっとると彩さんの顔が近づいてきた


「なんも見てへんから大丈夫」

「…」

「ほら、はよ帰るで」

「っえぇええぇぇえ!?」

「っるさ。」

「だだだっ、」


だって、彩さんがキスするから!!
そりゃ声も出るやろ!!


「はいはい。
話は後で、やろ?」

「なんでそんな!!」


なんでそんなあっけらかんとしてんねん!!

メイク直さんとあかんのに、それどころやなくなったやんか!!


-END-



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