しちゃいました

□遠回し
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「なぁ、海行こ!」

「はぁ!?」

「もう暑いんやしええやん」

「いやいや、もう夜なんやけど」


隣の家に住む彩が部屋に転がり込んでそんなこと言うた

確かに日中は暑いけど、夜は暑くないし、長袖長ズボンの寝巻き姿で言われても説得力ないんやけど


「もう海入っとる人おるんやし、気温的にはOKやろ?」

「OKちゃうわ
だいたい、今から行くってどーやって行くねん」

「原付」

「あほか
まず親が許してくれへんわ」

「いいやん、30分くらいで着くんやし」


不良少女は考えることおかしいんとちゃうか
この時間帯の30分ってむっちゃ危険やし、警察に見つかったら補導されるで


「明日でええやん」

「今日がええねんけど」

「なんでやねん」

「…美優紀が行ってん」

「対抗心?」

「ちゃうけど、あたしも行きたいなーって」


みるきーはどうせ恋人と行ったんやろ

私らは付き合ってへんし、彩は私に対してそんな気ないやん
…私はそんなことないけど


「ほんなら明日みんな誘って行こーや」

「今がええねん」

「はぁ、わがままなんやから」

「ええの?」

「少しだけやで
絶対入ったらあかんからな」

「わかった!」


結局言うことを聞いてしまうんよな
彩もそれをわかっとってお願いしてくるし。


「しっかり捕まっとってな」

「はーい」


親にバレんように原付を出し、彩を後ろに乗せて海まで走った


「海やー!!」

「ちょ、約束したやん!」

「足だけやからさ」

「パジャマ濡れるで」

「こーしたら大丈夫やろ」


裾を膝くらいまでずり上げてクロックスを脱いで海に走っていった彩を同じようにして追いかけた


「やっぱ冷たいけど、気持ちいな」

「普通に冷たいだけやわ!」

「まぁまぁ」

「あ、もしかけたら置いて帰るからな」

「あっぶねぇ」


足で水をすくい上げようとした彩に言うとギリギリで止めて、何も無かったように1人でバシャバシャしだした


「ふー満足満足」

「それは良かったです」

「あ、あたし飲み物買ってくるわ」

「ほーい」


彩が満足そうやからええけど、まだこの時期の夜の海は冷えるなぁ。

ホット買ってきて貰えばよかった


「はい」

「さんきゅー
え、ホット?」

「うん
やっぱまだ冷えるし、ホットがええかなって」

「彩は冷たいん?」

「あたしはオレンジジュースの気分やねん」


彩が買ってきてくれたのはホットのカフェラテ
意思疎通したんかと思うくらいピンポイントで買ってきてくれるやん


「なぁ」

「んー?」


どんくらい経ったかわからへんけど、ずっと黙って波音を聞いとると隣に座った彩が肩に頭を乗せてきたから、ドキドキしながら返事をした


「海が、綺麗ですね」

「やんな」

「それだけ?」

「ん?あ、ゴミ捨ててくるで」

「…ありがとう」


いきなり言われても頭ついていかんやろ
最初は普通に返事したけど、すぐ意味わかったし

嬉しすぎてとりあえずゴミ捨てに行って気持ち落ち着かせる為に立ち上がったけど、彩が不安そうな顔で見てきた


「彩、明日は晴れるで」

「へ?」

「ばーか
私はな何年も前からや。」


ポカーンとしとる彩を置いて自販機の横にゴミを捨てに行きながらこれからどんな話をするか頭で想像しながら、とりあえず彩の反応が楽しみやなーなんて考えながら戻った


-END-


裏エピで言うとホットが売り切れて自分は冷たい飲み物にした彩ちゃんでした。



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