しちゃいました

□あんた
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「名無し、こっちさげて」

「はい」

「名無し、これお願い」

「わかりました」


ここで働き出して1ヶ月たってだいぶ慣れたけど、分からへんことはまだまだ沢山ある

ここの人たちにはまだ女子高生ってばれてへんのがすごいよな笑


「今日西園寺さん来とるらしいで」

「アントニオさんと西園寺って人、どーゆー関係なんですか?」

「名無し知らんっけ?」

「わかんないです」

「アントニオさんが気に入ってん、西園寺さんを。
いつも西園寺さん来たら奥の部屋入っていくやろ?」

「あの部屋って、特別なんですか?」


その西園寺って人が来たらアントニオさんは絶対奥の部屋に案内するし、誰も出入りしやんし飲み物も頼まへんから中がどーなっとるか分からへん

今日やって、アントニオさんが扉閉めたの見てからもう閉店しとるのに出てこーへんもん。


「特別もなにも、男女が入って出てこーへんのやからそーゆー部屋しかないやろ」

「そーゆー…」

「あ、わかった
名無しもアントニオさんのこと狙っとるんやろ!」

「別にそーゆーのじゃないです」

「名無しじゃ無理やで
アントニオさんのタイプやないもん」

「やから、そーゆーのじゃないです!」


アントニオさんいいなとは思うけど、狙っとるとかやないもん!

ただ、やっぱアントニオさんモテるから西園寺って人と出来とんやなって…


「おまえら、なに名無しいじめてんねん」

「いじめてないですよ
ね、名無し?」


やっと出てきたと思ってアントニオさんの方を見ると、あの人の姿


「ぇ…」

「名無し?」

「へぇ、アントニオもいい子入れるね」


あの人が近寄ってきて肩に手を置いてきた

持っとったグラスが手から落ちて足元で割れる音がしたけど、そんなんどうでもいいくらい足に力が入らへんくて、身体が動かへん


「こないだ拾ってん
やけど、この子はあかんで」

「キャバ嬢じゃないんか」

「うちのペットやから」

「ならキャバ嬢になったら指名しよーか」

「そーしてや」


アントニオさんがあの人の手を払ってくれて、解放されたかのように身体に血がめぐり出した

この人がアントニオさんのお気に入り…

なんでこんな人がいいん
アントニオさんならもっと他の人でもいけるやん。
こんな最低な人間なんかやめとけばええのに…


「今日はありがとうな」

「また来るわ」

「みんなお疲れさん」

「「ありがとうございました」」


あの人が帰って、みんな着替えに裏に戻っていった


「名無しの知り合いやったんや」

「…すみません」

「何が?」

「アントニオさんのお気に入りって…」


足元に落ちとるグラスを片付けながらアントニオさんと話をしとるけど、気まずすぎる
あの人がキャバクラに通っとること知らへんかったし、アントニオさんと繋がりがあったなんか知らへんかったし…


でも、そんなことよりせっかく解放されたと思っとったのに、あの人がここの常連なんか知らへんかった…


「名無し、ちゃんと話して」

「アントニオさんに嫌われたくないっ、」

「嫌わへん。」

「わからへんもん…」


嫌われたくないけど、アントニオさんのお気に入りなんやから、あの人とヤっとったとか言うたらもう出て行かなあかんくなるやろ…
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