恋を2

□恋時雨
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「くっそ…」


さっきまで行為をしとったベットの上。
相手の女は服を着て帰ってった。
ぼふっと布団を殴っても悔し涙しか出てこーへん

あたしはなにやってんねん…


『彩ちゃん、ありがとな』


ケータイが震え、淡い期待をもち開くとさっきの女から。

会計を済ましてホテルを出る

好きやない女抱いてめっちゃ虚しくて、あいつの隙間を埋めるはずが逆に思い出してしまう


「雨、か…」


あれは今みたいな雨の中やったはず。
山田が着とった浴衣に釘付けになった住吉祭
「90歳になってもラブラブな?」
って言った笑顔を忘れるために最後
今やから言える


「世界で1番山田を、山田だけをただただ愛しとった」


ってことを…


山田に出会う前は愛することがこんなに辛いなんてわからへんかった
遊んどったあたしを本気で愛してくれた山田。


雨が降り続けてあたしの涙を消してくれればええのに…

うそみたいやけど、もぉ山田はおらへん…


雨は一瞬にしてやんだ


無意識に足を運んどった山田との思い出の海。

時間が経って初めて気づいた1人になってできひん事の多さ
日々溜まっていく洗濯。
毎日の外食。
週末、日曜日過ごす孤独を持て余しとる
いっぱい山田から小さな優しさを貰っとったんや…
山田が引き出してくれたあたしらしさ

夏の海のオレンジ色の空を見ながら何気ないことの方が大切やとわかったんや。


思い出の浜辺。
やっとこれた
あの日からずっと来てへんかった浜辺。
大丈夫や、一歩一歩あたしはあたしで頑張って歩くから。


山田のことを思い出すとまた降り始めた雨。

傘のような存在がおらんくなって、心もびしょ濡れ
寒さに震え、孤独に怯えとった。
やけど、絶対負けへんとがむしゃらに前だけを見てきた


「大切なこと、忘れてへん?」

「え…?」


山田の声が聞こえて顔をあげたら雨がやんで晴れてきた


「大切なこと…」


山田は今のあたしのことどー思うんかな
あたしらしく生きとるか?


「あたし山本彩。」

「や、山田菜々です。」

「ふはっ、よろしくな」


出逢い。


「山田、山田!」

「え、彩どしたん?」

「岸野の変顔がやばいねん!」

「菜々ちゃん見てー」

「あはは、里香ちゃんそれはやばいわ笑」


笑顔


「山田っ!!」

「さ、やか…」

「山田!!」

「彩、わらって…」

「ずっと一緒やって言ったやんか!!」

「お願い、彩の笑顔見んと悔い残るから…」

「山田、あたしが助けるから!!」

「さやか…」

「山田、死なんでや!!」

「すき、や。」

「山田ぁ!!」


別れ。


「彩」

「岸野、あたしどーしたらええんかわからへん」

「…里香の前だけでも泣いてええで」


涙。


痛みはやがて強さに変わる。

日暮色の山田との愛を夏の海を見ると思い出すんや。
紅の夕暮れ。純情に憧れ。群青の夜明け。自分を戒め。


億千ある星の中、いつかきっと一途になれる人に出逢うやろう。

山田、そっちで綺麗になっとけよ
あたしはあんたにかっこいいって言われるようになるから
あたしが行くまで幸せにならんといて。
BIGになって絶対山田のとこに行くから。


悔やむのは今日が最後。


愛することでこんなに強くなるなんて知らへんかった。
山田と過ごした季節も今じゃ虹色の思い出へと

うそじゃない、ほら笑顔が…

今、あたしは生まれ変わるんや。


あんたが惚れ直すような人にかわるから。


-END-


別れたんじゃなくて、菜々ちゃんがこの世からおらんくなった設定です!!

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