恋を2

□運チやない!
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「次体育なんや」

「ん?」

「いや、べつに」


体操服のサイズ間違えたんとちゃうかって思うくらいダボダボのジャージを着とる山田がグランドに出とるのを見つけて声がでとったらしく、前の席の岸野が振り向いてきた


「あ、菜々ちゃんのクラスやん」

「らしーな」

「あーそれで」

「なんやねん」

「菜々ちゃん可愛いなぁ」


ニヤニヤした肩幅見せてきやがって、朱里に言いつけるぞ


「誰の肩幅がニヤニヤしとんねん」

「岸野しかおらへんやろ」

「彩やって顎のばして菜々ちゃん見とったくせに」

「のばしてへんわ」

「無意識に伸びてんで」

「はいはい、授業始まったから静かにしてね」


英語の担当の大島先生が止めてくれて岸野が前を向いた


線引いとるってことは50m走なんやろーか

コーンも出しとるし、先生がストップウォッチ持ってきとるし絶対そーやな


「山本さん、外ばっかり見ないで黒板も見てね」

「あ、すみません」

「怒られてやんの」

「うっせぇ」

「そこの2人、ここ書きに来て」

「岸野のせいやん」


山田は一向に走らへんし、ずっと見とると先生に注意されて岸野がいらんこと言うたから黒板に書きに行かなあかんくなった


「あ!!」

「なに?」

「山本さん、どうかしましたか?」

「あ、いや
なんでもありません」


ぱぱっと終わらして席に戻ったんやけど、グランドを見るとちょうど山田が走り終わったところやった

岸野のせいで見られへんかったやんか

あほが、肩幅デッカマンが、朱里に振られてしまえ


「せんせー山本さんが椅子蹴ってきますー」

「おい!」

「山本さん、授業終わったら職員室来る?」

「いや、すみません」


これ以上怒らせたらやばいと思って山田の体育を見るのをあきらめて、授業に集中することにした


山田、何秒やったんやろ…














「あ、さやか」

「おう
山田、体育やったん?」

「せやねん」

「なにしたん?」


知りませんでしたを装って話しかけると山田の後ろで岸野がニヤニヤしとる


「50m走
彩のクラスはもうした?」

「いや、まだ
何秒やったん?」

「…19秒。」

「ぶっ、は?」


じゅうきゅうびょう…。
19秒!?


「笑えばええやんか…」


お得意のフグ顔になった山田

いや、笑ったら絶対おこるやん
てか足遅いの知っとったけどそんなに遅いってやばない?


「ななちゃーん!!」

「ぐへっ、」


山田の首が外れるか思うくらい勢いよく抱きついた美優紀

美優紀はあたしの幼馴染なんやけど、山田のことが好きらしい


「見とったで、大丈夫なん?」

「心配するなら勢いよく抱きつかんといてよ」

「なんかあったん?」

「彩ちゃん知らへんのや」


しょうがないやろ、見すぎて当てられたんやから
てか、あれは岸野が悪いねんけどな

にたーっと見てくる美優紀を無視して山田に聞いた


「こけてん、走る時」

「あー」


やから19秒なんや
ガチで走って19秒やと思っとったから安心したわ

てか、足見ると手当されとるやんけ


「大丈夫なん?」

「一応保健室には行った」

「そっか
今日チャリなんやろ?
帰り乗せたるよ」

「ええの?」

「終わったら自転車置き場で待っといて」

「うん!」

「彩ちゃんだけずるい」

「あんたは部活やろ」

「あーぁ、こんなことになるんなら部活入らんかったらよかった」


私の菜々ちゃんに変なことしやんといてよ!なんて言いながらクラスに戻った美優紀


「ふふ、変なことやって」

「うっさい
はよ戻れ」


変なことってなんやねん!
こっちはしたくてもできひんわ!!


「はいはい」

「山田、」

「彩ありがとな」

「…おう」


くそ、なんやねんあの顔。
あほちゃう、ほんま

あー誰にも渡したくないねんな


遠くなっていく背中を見ながら思った。


-END-

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