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□高嶺の林檎ちゃん
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高嶺の林檎は誰も手の届かない所に実った赤くて美しい果実。
誰もが自分には手が届かないと思って、どんなに欲しくても自分の身の丈以上に手を伸ばしたり道具を使って身を乗り出したりもしない。
私はその欲しくてしょうがない果実が運良く落ちてくるなんて偶然に期待なんてしない。
誰かに取られる前に最大限の努力をもって、必ず私の物にしてみせる。
「彩ちゃん、好きやで。」
ソファーに座る彩ちゃんの膝の上にまたがり、向かい合わせになるようにすわる私。
「あんたに言われても何もときめかんわ」
「なんでなん?」
「こんなグイグイ来られたことないから、わからん」
腕組みをして余裕あるみたいな顔が好き過ぎてなんかムカつく。
「みんな彩ちゃんに手も伸ばそうともしぃひん意気地無しなだけやん。それに誰も手にできひんで賞味期限きれてしまうなんて可哀想やろ?私は今欲しいねん!」
「あんたなぁー、勝手に人を賞味期限切れ寸前にすんな。」
「賞味期限切れ寸前とは誰も言っとらんで」
「おい、あたしの事好きやないやろ」
「だから好きやって言うてるやん」
彩ちゃんは、私がどんなに好きと言っても冗談にしかとってくれない。
他の子に告白されたって、その子を傷つけないように優しく断ってる事も知ってる。
でも、いつか誰かの物になるかもしれないし、それが私以外というのは許せない。
今は誰にも手をつけられてないから、瑞々しい肌に傷なんてないけど、その肌に最初に歯形を付けるのは他の誰でもなく私だ。
根拠のない自信と独占欲だけで今日も彩ちゃんを口説きにかかる。