銀魂 小説 下

□殺してから気付きやした
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あぁ…
なんで…
なんであんたはそうやって、誰にでも優しくする?こんなに好きなのに
なんであんたは…

俺だけを見てくれない?

あんたが俺だけを見てくれないというのなら…

一日目
沖「旦那」
銀「あ?」
沖「団子奢りやすぜィ」
銀「まじか!?サンキュー!」

旦那に団子を奢るなんて嘘をついて、こっそり団子に薬を入れた。
旦那…今日から俺だけを見てくだせェ…

二日目
沖「旦那」
銀「あ?」
沖「はい」
銀「…くれんの?」
沖「えぇ、たまたま貰ったんで」
銀「ラッキー!ありがとーな!」

貰ったと嘘を吐いて、本当は薬を仕込んだいちごミルクを旦那に渡した。
旦那が、俺を見てくれないから、あんたはその報いを受けるんだ。

三日目
沖「旦那」
銀「どーした?」
沖「一緒にカフェ行きやせん?」
銀「でも沖田君今仕事中じゃん」
沖「たまには息抜きも必要ですぜィ」

そう言って旦那を連れ込んだカフェで、旦那の頼んだパフェにバレないように薬を入れた。
そうやって、誘われれば誰にでもそんな顔を見せるんでしょう?

四日目
そろそろ旦那の様子がおかしくなってきた、これは狂うのも時間の問題だ。
今日だって顔が真っ青で、フラフラしてた。
勿論薬は飲ませたが、こりゃそろそろ気付かれる。
気づかれてもいい。もうすぐ旦那が手に入る。

五日目
あぁ、とうとう気付かれた。
旦那に路地裏に連れてかれて怒鳴られた。なにをした!?って、ただ、それだけでも息が上がって昨日よりも青白い顔をした旦那を見て、これは相当キてるな、と思った。
だから俺は、適当に誤魔化して、もう力もあまり出ない旦那に手刀を食らわせて気絶させた。
そのまま近くに止めてあったパトカーに乗せ、屯所まで走った。
屯所まで来た後、俺は誰にも見つからない、俺しか知らない地下室へ旦那を運んだ。
「旦那…いつまでも愛してやすぜィ…
たとえ旦那がどこへ行っても」

六日目
昨日旦那を運んだ地下室へ行くと、案の定旦那は起きていて、当然というべきか狂いかけていた。
そして俺を見るなり、飛びかかってきそうだった。
だったというのは昨日俺が旦那の首に首輪と手足に鎖をつけていったから。
旦那は荒い息を繰り返して、血色の悪い顔で、今にも俺を殺しそうな目で睨んできた。
そんな、旦那の狂いかけた姿を目にしても、可哀想とは思わず、寧ろ俺の身体は歓喜と興奮に満ちていた。
やっと二人きりだ。もう誰にも会わせない。

七日目
俺は旦那に会いに行かなかった。
ただ、想っていた。

八日目
一昨日打った注射が効いてきたようで、旦那は俺に頼んできた。
銀「…お…きた…っ!いい加減にっ…たすけっ…」
助けてと、途切れ途切れに言う旦那が、あの旦那かと思うと、ひどく心地好い。
この前とは打って変わって俺に従順で、目の色も違う、身体は小刻みに震えている。
トテモキレイ。
イトシイ。

あぁ…
そうだ、これだ、この顔が見たかったんだ…昨日行かなかったお陰で旦那は俺しか見れなくなった、そりゃそうだ、あの薬をうったのだから。
あの薬をうった後、一日放置しておけば、うたれた奴は、うった後…つまり次の日一番最初に見た相手に素直に従うようになる。
こんな快感は生まれて初めてで、俺は暫く旦那を見つめていた。
そして旦那があのチャイナ娘と眼鏡の名前を呟いた瞬間、俺は腰にさしてあった刀で旦那を斬りつけた。
勿論、死なない程度に浅く、何度も。
気持ちいいですよねィ…旦那……俺だけを見てくだせェ…
俺が居ればいいんでしょう……?
…何回か斬ったあと、俺は刀についた旦那の血を舐め、まだ血がついている刀の先を旦那の口に突っ込んだ。
俺が舐めなせェと言えば、旦那は舐める、刀をガチャガチャ動かしてもやめない。
口の中がきれたのか、口の端から血が伝う。
それすらも美しいと思った。
旦那…綺麗ですぜィ。
頭とは反対に旦那の身体はガタガタと震え、今にも死にそうだ。
きっと今、旦那は死ぬよりも辛い思いをしている、それは分かってる。
でも俺は…
旦那が殺してというまでやめるつもりはない。
旦那が俺だけを見てくれるようになるまでは、こんなんじゃきっと足りない。

九日目
俺は処刑するつもりだった悪人をつれてきて殺した。
勿論、旦那の目の前で。
旦那は耳を塞ぐことも目を閉じることもしない、当たり前だ、俺がそう言ったんだから。
あの薬の威力にはいくら旦那でも敵わない、ましてや一度薬で弱らせたんだ。
だから旦那は、目で、耳で、人の殺されていく様を見ることになる。
とんだ拷問だ。
いや、実際はどんな極悪人にもここまでひどい拷問はしないだろう。
そんなことを考えて、俺はニヤリと笑った。
旦那だから…特別にこんなことするんですぜィ?
もっと…喜んで、笑ってくだせィ

十日目
旦那に会いに行くと、旦那はグッタリとしていた。
それが気に食わなくて、俺は、
旦那の目の前で、チャイナ娘と眼鏡の写真を燃やした、耳もとで、殺してきましょうかねィと呟いて。
そしたら面白いくらいに目を見開いて俺に掴みかかってきた。鎖が長いから掴むのには問題はないが、その手には全くといっていいほど力が入っていない。
声を出そうとしているが、上手く言葉が出ないようで口をただ動かしているだけ。
そのうちに諦めたのか、ガクリ、と腕を下ろし荒い呼吸をしはじめた。

あぁ、快感

十一日目
旦那は自分を傷つけだした。
近くに置いてあったナイフを使ってリスカして、身体のあらゆるところを斬りつけていた。
目が血走っていて、あの頃の面影は消え失せている。
俺が…俺が…と、呟きながら自傷している旦那を見て、そろそろ限界か、と思い、そのまま地下室を後にした。

十二日目
旦那が俺に言った。
銀「殺してくれ」
と、
俺はゾッとした、恐怖にじゃない、旦那が俺に向かって殺してくれと言ってきたことにひどく興奮したからだ。
これで俺だけを見てくれる、そう思った。

沖「旦那ァ…」
俺は今にも死にそうな旦那の随分と細くなった白い首に手を回す。
銀「…ぐっ…」
ゆっくりと、力を入れて…
沖「…俺もあとから行きますんで、向こうで会いやしょう?」
…ゆっくりと
沖「…好きでさァ」
最後に愛の言葉を口にして
銀「…お、れも…すき、だったよ…
最後に見たのが…お前でよかった……」
旦那の口から初めてその言葉を聞いて
沖「…はっ…
最後の最後で…」
そのまま一気に力を入れて

沖(あんなこと言うなんて)

俺は、旦那を殺した。

「旦那…やっと…やっと会えるんですねィ……今度こそ…俺のモンになってくれますよねィ?」
 

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