銀魂 小説 下

□運命の人
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ドクンッ
と、その人を見た瞬間心臓が大きく波打った。これが俗に言う「運命」なのかと思い、ゴクリと唾を飲み込んだ。

この世の人間は、α β Ω に分類されている。丁度思春期のあたりでそのどれに分類されるかという診査を受けなければならない。
βが一番多く、この診査を受ける殆どがβと言っても過言ではない、αは極小数でΩはそのαよりももっと少なく、Ωに分類されるのは本当に不幸だと言われている。
俺は珍しく親が両方αの子だったから当然のようにαだった。そして何故か分からないが俺のまわりにはαが結構いた。
高校の時同じクラスだった、チャイナにチャイナの双子の兄の神威、一つ上の部活の先輩だった土方、部長だった近藤さん。
後は全員βで、Ωには会ったことがなかった。

…なのに、バイト先で出会ってしまった、運命の人に。
俺は、まぁ馬鹿ではないしそれなりに勉強が出来たから今大学へ行って、コンビニでバイトをしている。週三くらいで夜、レジをうっていて、あの日は丁度その中の一日にあたっていた。
そしてその人は現れた。片目に眼帯をした男に、長髪の男、モジャモジャのサングラスをかけた男とその人と、四人でコンビニへ入って来てお菓子と飲み物を持って俺のレジへ来た。
俺は完全なる揺るぐことのない強いαだったから直ぐに分かった。その人がΩだということも、後の三人が全員αだということも。
分かってしまったから駄目だった、俺はその人の放つΩのフェロモンにやられそうになってレジを放って逃げた、俺の代わりにβの先輩がやってくれたが、その人たちが帰って俺のところへ来ても先輩は怒らなかった、寧ろ大丈夫かと心配してくれた。
それからずっとあの人のことが頭から離れない、あの人のことを考える度にあの白い首に噛み付きたくて堪らない衝動に駆られる。ただこれは「番」になりたいというだけで、好きとかではない。「番」になるということは一生共に生きなければならないわけで…そうなった時俺はあの人と一生共に過ごせるのだろうか…

だがまぁ幸か不幸か、こんな時ほど俺の運はよく働くようで…
一週間くらい前にその人…銀時さんに買い物に行った先で会ってしまった。
俺はスーパーに夕飯を買いに来ていて、銀時さんも惣菜を買おうとしていたらしく、丁度出くわした。
沖「あ」
銀「…お前は…」
その時は前よりフェロモンが大分マシになっていて普通に話せた。
沖「…前はすいやせんでした…俺急に気持ち悪くなって…」
銀「いいよ別に、誤魔化さなくても、お前αだろ?」
沖「…え、なんでそれを…」
銀「そんくれェ分かる、俺Ωだし」
意外にもあっさりとΩであることを言った銀時さんには驚いたけど、相槌をうって驚いてることがバレないようにやり過ごした。
銀「じゃ、俺もう行くわ」
そう言って行こうとした銀時さんを、俺は呼び止め、言った。
沖「…あのっ!」
銀「あ?」
沖「な、名前、名前聞いてもいいですかィ?」
銀「名前?
坂田 銀時、お前は?」
沖「俺は、沖田 総悟でさァ」
銀「そっか、いい名前だな」
沖「っ!」
ポンッと置かれた手の温もりに俺の心臓はあの時とは違う感じに脈打った。
沖「銀時さん!」
銀「ん?」
沖「れ、連絡先!交換しやせんか!?俺もっとあんたと話したいんでさァッ!」
銀「…沖田君」
俺の言葉に銀時さんは驚いたようだったけど、静かに頷いてくれた。
俺はその時めっちゃ嬉しくて何が何だか分からずにただソワソワしていて…
本当に夜のスーパーで良かったと思う、昼間とか夕方のスーパーだったら人が多すぎて俺らのまわりにきっと人集りができたし…。
連絡先を交換した後は、夜も遅いということで、俺らは別れた。

それからはほぼ毎日のように連絡を取り合った。
銀時さんはどんな時間でもちゃんと返事を返してくれて、俺はそんな銀時さんと話すのが楽しくて、だから、俺は浮かれていたんだ。
浮かれて、銀時さんがΩであることを忘れていた。

昨日…
ヴーッ ヴーッ ヴーッ
ガチャッ
沖「あ!銀時さんっ!」
銀「…ッン、ハァッ…お、きた、くん…」
沖「電話は昨日ぶりですね!あのっ、今日…」
銀「…ごめっ…ハッ…ァ…今、やばい、から…また、かける…」
沖「え!?ちょ、銀時さん!?大丈夫ですかィ!?」
銀「だいじょ、ぶ、だから…」
沖「あのっ…もしあれだったら家に…!」
銀「くるな…!」
沖「…へ」
銀「…っ、わる…ちょ、たかすぎ…!」
ガッ
沖「っ…!?」
高「お前が沖田か」
沖「…そ、でさァ…あんたは…?」
高「お前、もう銀時に近付くな」
沖「…は?」
高「お前αなんだろ?だったら今こいつが何で苦しそうなのか分かるよな?」
沖「…っ!」
高「どうやらお前は銀時に相手にされて一人浮かれてるようだから言っておくが…
銀「やめっ…!たか、すぎ…!」
桂「何も言うな銀時、本当のことだ」
高「あいつの番は俺たちだ、お前じゃねぇ」

ドクンッ

電話越しにもはっきりと聞こえたその言葉に、俺は思わずスマホを落とした。

沖「…そ、な…うそ、だ…だっ、て…あの時…」
高「そういうわけだからじゃあな」
銀「ちょ…やめ…!ろ…!んで、だよ…!高杉…!やだ…!って…!」

プツッ

沖「…いま、銀時さんは…あいつらに…」

血が滲むほど強く拳を握りしめる。

沖「…そんなん、ぜってえー許さねぇ…
あの人の番は俺だ…!」

バンッ

乱暴に扉を開けて、俺は雨の降る街を我武者羅に走った。もう離さないと決めた、たった一人の愛しい人のために。

ザアァァァァ
銀「…な…んで…あんなこと…」
桂「…お前の幸せを願っているからだ」
高「…俺らは確かにテメェが好きだった、けど、そらぁ運命じゃなかった」
桂「お前とあいつを見て分かったさ、お前の運命はあいつだと」
銀「だったらなんで…!」
坂「あいつを…沖田を試すためじゃ
…ああ言って、それでもここを見つけ、こられたなら、その時はわしらはあいつを認めよう…お前の番として」
高「…俺らが好きになったやつを一番に思ってくれるなら…仕方ねぇから譲ってやる」
銀「…たか、すぎ…ヅ…ラ…さか、もと…
…っ、はぁ…っ…」
高「…っ」
桂「…きっついな…」
坂「…まだ、耐えろ…耐えるんじゃ…」

沖「…はぁ…はぁっ…どこ、だよ…!あいつ、ら…!大体おらぁまだ銀時さんの家だって…!
…っ!…そうか、あいつに聞けば…!」

高「…っだあ…っ!あいつはまだか!?まさかこねぇんじゃねぇだろうな!!」
桂「…それはないだろう…だが…遅いな…」
銀「…お、きた…くん、は…こない、よ…」
高「…はぁ?」
銀「…っだっ、て…家、教えてねぇ、もん…」
高「…嘘だろ」
坂「…どうするがか?高杉」
高「…しょうがねぇ約束だ、銀時は俺たちのつが…」

バンッ

高「っ!」
坂「なんじゃ!?」
桂「…誰だ!」
沖「…っはぁ…はぁっ…はぁっ…!」
銀「…お、きた、くん…!」
桂「っな!」
高「…テメェ知らなかったんじゃ…!」
沖「…はぁっ…はぁっ…はっ…聞いたん、で.さァ…!…チャイナに…!」
桂「…リーダーに…!?」
沖「…あぁ…!」
初めて来た銀時さんの家なのに、俺はびしょ濡れのまま入り、高杉たちのそばにいる銀時さんを抱き締めた。
俺が冷たいからなのか、銀時さんが発情してるからなのか触れ合う身体からはひどく高い体温が伝わってくる。
銀「…おきた、くん…!だ、めだって…!おれ…いま…!」
沖「知ってまさァ…!
…知ってるから、抱き締めてるんですぜィ…
…銀時、俺ぁ…初めて会った時、銀時が俺の運命だって、そう感じやした、だからさっき高杉が言った言葉が嘘だって思ったんです、そんで、もし銀時も同じだったら、って思って来たんですけど…
…違いやすかィ…?…銀時は、運命、感じやせんでしたか?」
銀「…っ」
桂「…高杉」
高「…あぁ…」

パタンッ

銀「…お、れも…かんじ、た…お前を初めて見た時から、そう思って、たん、だ…
…だ、から…仲良く、なれたらいいな、って…もし、番、になるのは、断られてもそば、にいさせてほしいって…っは…はぁっ…はぁっ…」
沖「…銀時…っ!
…それっ、て…俺と番になってくれるってことですかィ?ほんとに?ほんとに俺でいいんですかィ?」
銀「…だ、から…そうだ、って…
…俺は、お前じゃなきゃ…やなんだよ…!」
沖「…っ…!
…それ…ほんっとに…
あー…っ、ったく…折角お許しもらったんだ…今夜、覚悟はできてますよねィ…?」
俺がそう聞くと、銀時は真っ赤な顔で俯いて頷いた。
沖「…ったくさん、愛してあげまさァ…」

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