銀魂 小説 下

□腐れ縁だからしょうがない
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銀「…うっ…」
その日、二日酔いとは違うとてつもない吐き気が銀時を襲った。

ppp…
銀「…ん…ゲッ、38.8°…これ、やばくね?」
あの後トイレに直行し吐くだけ吐いて、大分落ち着いたところでトイレを出てうがいをし水を飲み、一息ついたところで怠かったこともあり取り合えず熱を測った、そしたらこれだ。
銀「…っあー、どーりで…」
そう呟いて目を閉じる、考えてみれば頭が痛い気もする。今日は新八と神楽はお妙とプールに行っているためいない。銀時はどーせ泳げないし、依頼も入るかもしれないと思ったため断ったのだ。
銀「…っどーすっかな、薬はねェし、かといってこのまま寝てるっつーのも…そもそもこれ良くなんのか?」
銀時がそうぼやいていると、いつも暇な万事屋に一本の電話の音が鳴り響いた。
銀「はいはい万事屋銀ちゃんでーす」
いつも以上に気の抜けた覇気のない間延びした声でそう応え、しばらく話した後、電話をきった。
銀「…帰りに薬でも買うか…」
どうやら依頼を引き受けたようで、この熱で。

銀「…っあーしんど…」
フラフラと覚束無い足取りで依頼をしてきたところへ向かう。電話をしている時はぼーっとしてて気付かなかったが、よくよく考えてみるとそこは、銀時たち万事屋とは腐れ縁の真選組のいる屯所だった。
銀「…え、まじで?」
入口で立ち止まってると中からジミーこと山崎退が現れた。
山「あ、旦那!いらっしゃい、まってましたよ〜」
銀「あー、ジミー君、やっぱりおたくだったのね」
山「…やっぱりって、初めに名乗ったじゃありませんか、というより旦那、顔赤いですけど大丈夫ですか?心なしかフラついてるような気も…」
銀「あー気のせいだよ、んなことよりはやく案内してくんない?」
山「あ、すみません!こっちです」
流石監察方、この暑さで顔が赤いことくらい騙されるかと思ったが、そう簡単には騙されてはくれない、取り合えず話を戻すことで乗り切った。
山「はい、ここです、材料は冷蔵庫の中にあるのを使ってください、にしても本当に一人で大丈夫ですか?」
銀「大丈夫大丈夫、配るときだけ手伝ってくれりゃいいよ」
山「分かりました、ではお願いします」
ペコリとご丁寧にも頭を下げて山崎は食堂を後にした。山崎がいなくなった途端、銀時はずるずると床にしゃがみ込む、正直もう歩いたり、喋ったりすんのさえかったるい。
だがここで倒れてバレたらめんどくさいことに成りかねないと思い、力を振り絞って、ぼんやりする思考を振り払って立ち上がり、冷蔵庫を開けた。

そして昼時、隊士たちはいい匂いのする食堂を目指し、屯所内を走り回る。隊士たちもここのところ、食堂のおばちゃんが夏バテて来れなくなってから買弁だったためバテ気味になっていたのだ。
しかし「バテる」という単語は食堂に入った途端、隊士たちの頭の中から掻き消された。

そこに並んでいたのは夏バテ気味には嬉しい料理ばかり、どれもキラキラと輝いていて美味しそうだ。
隊士たちは銀時にお礼を言おうと探したが、既に来ていた山崎に銀時は客間で休んでいると言われ、後で行こうと思い直し席についた。


銀「…うっ…ぐっ…」
一方、山崎から客間を借りた銀時は、客間を目指し、壁伝いに歩いていた。襲い来る吐き気と頭痛に必死に耐えながら。

銀「…っあと、少…し…あ…?」

ガクンッと、いきなり足から力が抜け、銀時は廊下に膝をつく。酷い目眩と頭痛が銀時を襲う、尋常じゃない汗が噴き出し、気を失いかけた時、誰かに腕を引き上げられ、銀時は上を向いた。
土「…何してんだ…万事屋」

沖「大丈夫ですかィ?」

近「ちょっ、お前、顔真っ赤じゃねェか!」

するとそこに土方と沖田、近藤が立っていた。
三者三様だがみんな銀時を心配しているらしい、吐き気のせいで銀時が何も言えないでいると、チッと舌打ちをして、土方が突然銀時を抱き上げた。
そしてそのまま客間へ運ばれ、布団に寝かされる。

銀「…う…ひじ…かた…?」

土「…ったく、テメェ、なんで依頼受けた?すげェ熱じゃねェか」

銀「いや、なんかボーッとしてて…」
土「…はぁ…馬鹿か、だからテメェは…」
銀「…ぅっ…」
沖「旦那!吐きそうですかィ?袋持って来やしたからここに吐いちゃってくだせェ」
銀「…うっ…ぐっ…ごめっ…うげっ…」
…暫く吐いて落ち着くと、銀時は気を失うように布団に倒れ込んだ。
土「…寝た、か…
本当は薬飲んだほうがいいんだろうが、こりゃ起きてからだな」
沖「そうですねィ、じゃ取り合えずこいつ片してきまさァ、土方さん、旦那のこと頼みやしたぜィ」
土「おう」

ガラッ

沖田とすれ違うようにして入ってきた近藤は寝ている銀時を見て静かに土方に話しかける。
近「万事屋は寝たか」
土「あぁ」
近「…じゃあトシ、体拭くから手伝ってくれ」
土「おう」
そう言って土方は近藤がタオルを絞っている間に銀時の服を脱がす。
土「っ…」

そして息を呑んだ。いきなり止まった土方を不思議に思い絞ったタオルを持って土方を見ると、近藤も止まり思わず「すげぇな…」と呟いた。
そう、二人が見たのは銀時の白い身体に刻まれた無数の傷、大きいのから小さいのまで、深いのから浅いのまで、色濃く残るその傷は、まるで銀時の人生そのものを表しているいるようで、二人は胸が締め付けられた。
けど近藤は、迷わず銀時の体を拭いていく、その姿に土方も我に返り、力の入っていない身体をしっかりと支えた。

ガラッ

沖「近藤さーん、これで良いですかィ?」
近「あぁ、すまんな総悟、トシ、万事屋に服貸してやってくれ」
土「あぁ」
そう言って近藤は、沖田の持ってきた土方の服を銀時に着せる。
近「よし、これで一安心だな」
沖「ですねィ」
沖田は銀時の額に冷たいタオルをのせながらそう返す。
土「…ったく人騒がせな奴だ」
沖「でも、旦那がこんなされるがままになってるなんて」
近「そんだけ辛かったんだろう、今日は二人ともいなかったみたいだしな」
沖「そうですよねィ、悪いときに頼んじまいやしたね…」
近「そうだなぁ…」
土「ま、無事で何よりだ、どうせこいつは依頼だったらどんな時でも来るんだろうよ、それがたまたま調子悪ィ時にあたっちまっただけだ
不本意だがこいつとは腐れ縁だ、こいつが辛そうだったら俺らが支えてやりゃあ良い、あいつらには言わねェんだろうから」
近「そうだな!トシの言う通りだ!」
沖「土方さんもたまには良いこと言うんですねィ」
土「ったまにはってなんだ!ったく、ほらさっさと飯行くぞ」
近「お、万事屋の飯か、楽しみだなぁ!こいつの飯うまいんだよなぁ…」
沖「あー腹減った、早く旦那の飯食いたいでさァ」
そう言って三人は客間を出ていく、その時に土方が見た銀時の顔は酷く穏やかで、土方は静かに笑みを溢した。

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