永遠の花〜運命(さだめ)恋歌〜【第一部】

□第一章 太陽の精霊と月の精霊
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ここはまるで天界のように美しい山、太極山―――‥‥。


その太極山で誰かを捜す少女の明るい声が響く


娘娘「―‥!井宿―‥!あ、見付けたね!」


木陰に捜していた人物を見付けて側まで行くと、幹に身体を預けて気持ち良さそうに眠る僧侶の姿


井宿「‥‥‥‥‥‥。」


余程疲れているのか、仮面が剥がれ落ちている


娘娘「‥‥(眠ってるね)」眠っている井宿を見て微笑む


「‥‥ん、娘娘‥なのだ?」気配を感じとって目を覚ます井宿


井宿「‥‥どうしたのだ?」訊ねる


娘娘「井宿を捜していたね!太一君が呼んでるね!」


「太一君が‥?判ったのだ!すぐに行くのだ!」仮面を付けて立ち上がり、太一君の居る大広間へ向かう


歩きながら話す二人


娘娘「井宿、仮面が取れていたね!」笑顔


井宿「だ〜‥!今回の修行の課題は流石にキツかったのだ。」苦笑い


娘娘「それだけ上達したね!」


井宿「からかわないでほしいのだ〜‥!」苦笑い


娘娘「からかってないね!最初の頃と比べると、気の扱い方も上手くなったし、強くなったね!」笑顔


井宿「ありがとうなのだ!」微笑む


大広間に着くと明るい声で話す娘娘


娘娘「太一君、井宿連れて来たね!」


「ご苦労じゃった、お前はもう下がって良いぞ」


娘娘「はーい!」その場から姿を消す。


太一君は娘娘を下がらせると井宿に視線を移す。


太一君「井宿よ、お主に大事な話がある。」


井宿「大事な話‥ですのだ?」


太一君「この紅南国に朱雀の巫女が現れた‥と言っても二ヶ月前じゃがな」


井宿「朱雀の巫女が‥。」


太一君「それと同時に倶東国には青龍の巫女が現れておる、これが何を意味するか‥お主なら判るじゃろう。」


井宿は少し考えて「‥紅南国と倶東国の戦争」返答する。


太一君「そう…それともう一つ、本来なら巫女を護る筈の朱雀七星‥その星に闇が迫って来ておるのじゃ。」


井宿「闇、ですのだ?」


太一君「少しずつではあるが、その闇はお主達朱雀七星士を必ず呑み込む‥!」


「朱雀の巫女にも険しく困難な道が待っておる。」


井宿「‥‥‥‥‥‥。」


太一君「井宿、これは朱雀の意思なのじゃが‥。ワシもお主達七星士と巫女の側で見守る事が出来る者を付かせたい‥と思っておる。」


井宿「それは‥‥。」


太一君「太陽の精霊と月の精霊、この二人が巫女と七星士の手助けとなってくれる筈じゃ、お主が旅立つ時、できればこの精霊達を連れて行ってほしいのじゃ。」


「井宿よ、朱雀とワシからの願い‥‥聞き届けてはくれぬか?」


井宿は少し考えて「‥‥判りましたのだ」と返答する


太一君「おお!聞き届けてくれるか?!すまぬ‥。」礼を言う


井宿「ですがその精霊というのは‥‥。」


「本来は封印されておる‥‥んっ!」術を唱えて首飾りを取り出すと井宿に渡す。


井宿「これは?」首飾りを見る


太一君「それは精霊の首飾り、それを身に付けて"我、精霊と契約せし者"と念じて移動術を唱えるのじゃ。」


「そうすれば精霊が封印されている神器が置いてある場所まで導いてくれる筈じゃ‥それを持って来てほしいのじゃ。」


井宿「神器‥ですのだ?」


太一君「その神器に精霊達が封印されておる。」


井宿「‥判りましたのだ!すぐに行って来ますのだ!」


首飾りを身に付けて太一君に言われたとおりに念じて移動術を唱える。


太一君は井宿が封印の間へ向かった後、軽くため息を付いて黄龍と話した事を思い返す。


太一君「‥(ひとまず、これで良かろう。しかし黄龍のやつ、使いの者を送る事を伝えたら確かめたい事がある‥と言っておったが、何をする気じゃろうか‥。)」


「‥(それに、黄龍があっさりと封印を解くことを許した事‥‥気になるのう)」



一方、封印の間へと向かった井宿は‥‥‥。


井宿「封印の間へ来た筈なのだが‥何処なのだ?ここは‥。」


薄暗い森の中を一人、歩き回っていた‥‥。


封印の間を捜しながら歩いていると湖に出る


湖には一隻の小船が浮いていて、その小船の中には錆び付いた短剣と割れた鏡‥‥。


その光景を見た井宿は正直…怖いと思った。


井宿「‥‥っ‥。」


その場から動けずにいると、どこからか一匹の空色の蝶が飛んで来る。

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