永遠の花〜運命(さだめ)恋歌〜【第一部】

□第六章 最後の七星士
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長宏で診宿を見付けて、七星士を捜しに歩き回っても最後の七星士は一向に見つからず、偶然見付けた風車小屋で休息を取っていた。


鳳明「‥‥ん‥もう朝か」


まだ眠たい目を擦って周りを見渡すと、自分の隣で壁に背を預けて眠っている翼宿の姿に気が付く、


手を伸ばせば届きそうで届かない‥そんな微妙な距離で静かに眠る翼宿、


翼宿「‥‥‥‥‥‥。」


翼宿のあどけない寝顔を見ながら長宏で助けてくれた事を思い出す鳳明


鳳明「‥(ありがとう、宜しくね!翼宿!)」


まだ眠っているみんなを起こさない様に静かに風車小屋を出る。



(パタ‥ン)



外に出るとフワリ‥と暖かくて柔らかな一陣の風が吹く。


「‥‥良い匂い」


歩きながら朝の散歩を楽しんでいると穏やかな風の匂いに混じって微かに漂って来たのは黄龍の気配‥‥。


「‥(黄龍様?)」


穏やかな風に耳をすませると黄龍様の声が聞こえて来る。



『(‥‥‥‥‥‥‥。)』



鳳明「‥(はい、今の所、江南国と倶東国との戦争以外は何も‥‥。)」現状の報告をする。



『(‥‥‥‥‥‥‥‥。)』



鳳明「‥‥(はい、判りました、お気遣いありがとう御座います。)」そう返答すると黄龍様の気配が遠くなって行く。



黄龍様の気配が完全に消えた後「‥(やっぱり"ついで"だったよ‥私達‥。)」そう思い、軽くため息を付く鳳明。



―――‥‥‥‥。



(パシャ‥‥パシャ‥ン)


河原で顔を洗っていると誰かが差し出してくれた手拭いに気付いて「‥ありがとう」受け取って顔を拭く、


「(‥って、誰?)」確かめようと見上げてみると「お早うさん!」そう言ってこちらを見ている翼宿、


鳳明「翼宿‥おはよう!早いね!」笑顔


翼宿「まあな!‥お前が出て行くのが見えたんや。」膝を付いて袖を捲って顔を洗う。


鳳明「あ、起こしちゃった?!‥ごめん」手拭いを差し出す。


「おおきに」差し出された手拭いを受け取って顔を拭きながら話す翼宿


翼宿「オレも起きたところやったし‥気にすんなや!」笑顔


鳳明「ありがとう!」笑顔


翼宿「お、おう‥それよりオレ、お前に聞きたい事があんねんけど‥ええか?」


鳳明「聞きたい事?何?」


そう訊ねると鉄扇を抜き取って、此方に見せる様に鉄扇を前に差し出して「これ‥もう何も言うとらんのか?こいつの言うとった会いたい奴言うんは‥‥誰なん?」訊ねてくる。


鉄扇を見ながら静かに話し出す鳳明。


鳳明「願いが叶ったから、もう語っては来ないよ。」


翼宿「語って来えへんて‥消えてしもうたんか?」


鳳明「ううん消えてない、いつもは静かに見守っていて本当に伝えたい事以外は語っては来ないから‥鉄扇が会いたがっていた人は二人。」



翼宿「二人やて‥?」


鳳明「うん、一人は先代のお頭さん‥‥どんな形でも良いからもう一度だけ先代に会わせて欲しかった‥先代の処に戻りたかった‥って」


「せやったんか‥ん?それで?もう一人て誰なん?」鉄扇から鳳明に視線を移す。


鳳明「もう一人は‥先代のお頭さんが良く話してくれた人で‥名前しか知らなかったみたい‥。」鉄線を見て苦笑い


「せやから誰なん?‥勿体ぶっとらんで早よう‥‥。」じれったそうに訊ねてくる翼宿に対して「‥翼宿だよ!」翼宿を見て明るい笑顔で返す鳳明


翼宿「へ‥?」


鳳明「‥次代のお頭さんの名前だと思っていたみたい‥翼宿に会わせてくれって、そう言ってた。」鉄扇に視線を移して話す。


「‥‥せやったんか」鉄扇を見て呟く


翼宿「‥ん、せやけどオレに会いたいって、何でや?」訊ねる


鉄扇から河原に視線を移してゆっくりと語り出す鳳明


鳳明「それは翼宿と一緒に話してくれた朱雀の伝説、それと関係があるのかまでは判らないけれどもし関係があるのなら一緒に戦いたいって、そう言ってた。」


「会って確かめたかったんだね‥次代のお頭が本当に朱雀七星士なのかどうか。」



翼宿「‥‥‥‥‥‥。」


翼宿は何も言わず、鉄扇を見つめると「ほんまやで?今頃、気付いたんか?お前も‥。」右の袖を託し上げてくっきりと浮き出た"翼"の朱文字を見せる。


「翼宿」名前を呼ばれて呼ばれた方を見ると「私も頑張るからね!美朱とみんなを護る為に!」こちらを見て無邪気な笑顔で話す鳳明の姿、



そう話す鳳明に対してどこか切なさを覚えながらも「アホかお前は‥もう戻るで?」そう言って立ち上がり、踵を返す。


「うん!」返事をして立ち上がる。




風車小屋へ戻ると、この近くに村がある事が判る。


その村が鬼宿の村と判ると嬉しそうにハシャぐ美朱、


早速、出発の準備をして白江村へと移動する。



白江村に入ると、この前の倶東国の刺客の事が嘘の様に村全体が平和な雰囲気に包まれている。


そんな中、一瞬何かの気配を感じて立ち止まって振り返る妃時


妃時「‥‥‥‥‥‥。」


井宿「‥ん、妃時?どうしたのだ?」


妃時「いえ、何でも有りません、多分私の気のせいです。」微笑む

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