第二章

□22.拡がる曇
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一つ溜めた息を漏らし、カブトは思う
裕巳が雨隠れの里に向かって丸一日が経つ、と




それは、大蛇丸への薬を調合していた昼下がり
カブトは自分が発する音が虚しく空間に溶け込むのを耳で感じながら規則的に手を動かす





ゴリゴリゴリゴリ…






ゴリゴリ…





その手をピタリと止めさせたのは机に置かれた水の面が揺れ動いた為
カブトは調合途中の薬を湿気から守るように小さな小瓶へと移すとその爪先を扉へと向かわせる








そこは大蛇丸の居室





カブトは大蛇丸の了承を得て部屋に入室すると既に先客がいる
その先客は音隠れの四人衆、腕の痛みに苦しむ大蛇丸に膝をつき、赴いていた




「うぅ…ぐぅ…‼ あの老いぼれめ…よくも…‼ はぁ…はぁはぁ…。」





大蛇丸が掴んだシーツに皺が寄る




『……………。』




多由也を含めた四人は黙って視線だけを大蛇丸に向ける

そんな彼らの視線を受け止めた大蛇丸は長い黒髪を揺らし、首を動かす




「何か言いたそうね…?」




「いえ…。」




一人が小さく否定を口にすると大蛇丸は口角を上げる




「フフッ…今の私なら、あなた達でも殺せるわ…殺るなら今しかないわよ…?」




「…………。」




四人衆のリーダーである左近が首筋を押さえる




「…そうね、呪印で縛られている以上、私に歯向かうことなど出来る筈もなかったわね…。
フフ…失敗に終わったとは言え、“木の葉崩し”お前達は役に立った…何か褒美をとらせましょ。
望みを言いなさい。」




大蛇丸はベッドから起き上がると膝まずく四人衆の前に立つ




リーダーが答える




「望むものは決まってます。」




「力…。忍としての力…。それ以外望むべくもない。」




力を欲する彼らに大蛇丸は満足げに笑う




「良いわね…あなた達、凄く良いわ…叶えてあげましょう。」





大蛇丸はカブトに視線を向ける




「カブト、彼らをサンプルに加えなさい。」





「…分かりました。」




「あなた達の次なる力を引き出すのは復讐心…究極の復讐心…呪印の力を飛躍的に高めてくれるわ。」




「それと“穢土転生”とどう関係あるぜよ?」




「あの実験場で死の恐怖を乗り越えたあなた達が得た感情…それは私への恨み…憎しみ…。
いえ、もっと強い感情…『いつか私に復讐してやろう』と思った筈…『殺されるかもしれない』
それだけで…そこまで誰かを恨むことが出来るのなら、本当に殺された時…あなた達…殺した相手を恨みながら死んでいく…蘇ることが出来るのなら、そいつに復讐したいと思いながら…あなた達は穢土転生によって復讐者として蘇る…その時にこれまで知らなかった更なる力を手に入れる…。
その力の源は相手を憎悪する復讐心…手に入れた力を存分に楽しむと良いわ…。」



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