第二章

□23.止まぬ雨
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夜の静寂が続いた



さわさわと風が草を揺らし奏でる音を聞きながらぽつりとぬるい雫が地面に一点の湿気りを与える




「何を…言って…。」




男の発した言葉に裕巳は言葉を失いそうになる




既に治療の終えた少年を地面に寝かせると裕巳は立ち上がる




「聞こえなかったか?
お前の罪を償いたければ、我々に大蛇丸の首を差し出せ。」





二度、同じ言葉が聞こえた

どうやら聞き間違えの可能性はない





「私が最初に言ったことを忘れたの…?
大蛇丸様に手を出したら私が許さない。
そんな私に大蛇丸様の首をとってこいだなんて…良く言えるね…。」




裕巳の瞳が動揺から怒りに変わる




「フン…奴は手配書Sクラスの犯罪忍、それはお前も知っているだろう。
殺されても文句の言えない罪を奴は重ね続けた、いや、今も尚重ね続けている。違うか?」




「…だからと言って、何故私達雨隠れの忍が木の葉の抜け忍を処理する必要があるの?」




「大蛇丸と言えば“伝説の三忍”と呼ばれる名のある忍だ。
その首を我が里がとったとなれば各国に我々雨の力を知らしめることが出来る、争い事もなくなる。
平和をもたらすことが出来る。」





「平和…争い事で平和なんて手に入る筈ない。
争いは争いを呼ぶだけ、悲しみしか生まない!
そんなものの先に…平和なんてある筈がない!」





ポツ… ポツポツ…





地面に幾つもの斑点が出来てきた





ザァァァァ…




やがてそれは広がり、水溜まりをつくっていく




…雨が降ってきた





「一週間だ、お前に…一週間の猶予を与える。
一週間後に大蛇丸の首を手土産に我々の元に帰ってこい。
それに歯向かうと言うのなら、お前を殺人未遂の裏切り者として、各国に手配書(ビンゴブック)で知れ渡ることになる。
そしてこれも忘れるな、我々が音の里の在りかを知っていると言うことをな…。
この雨陸…必ずお前を連れ戻す…。」




強い雨が降り注ぐ中、男は雨陸と名乗り姿を消す





「…………。」




裕巳は天を仰ぐ




ザァァァァァァァァ…





その日、雨は止まなかった





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