第二章

□21.雨との接触
2ページ/7ページ



「良いのよ、どうせあなたの力じゃ治る訳でもないしね。」




「…大蛇丸様、憎まれ口叩いても大蛇丸様が私の身体を心配して下さっているのは分かってます。
でも…だから私は少しでも貴方の力になりたい…。」





「…………。」




何も言えなくなってしまう大蛇丸




「大蛇丸様が私を助けてくれた……ように……。」





裕巳の声はだんだん小さくなり、記憶を探るような曖昧な言い方になる





「一体何の事を言ってるのかしら?」





「あれ…?」





何か考える裕巳の思考をストップさせるようにカブトが慌てて口を開く





「裕巳、そういえば何しに来たんだい?」




カブトの言葉にはっ、として裕巳は大蛇丸に向き合う




「大蛇丸様、私雨隠れに行こうと思うんですが…。」




「雨隠れに?」




その理由を問えば裕巳は答える




「雨隠れの医療書を調べに。」




裕巳が言う“医療書”で何が調べたいかは直ぐに理解出来た





「裕巳、気持ちは嬉しいけどこの封印はそんじょそこらのーー。」




途中で大蛇丸は裕巳を諦めさせるのを止めた



裕巳の顔がどう言っても聞かない顔をしてた為だ





「…好きにしなさい、気分転換にもなるでしょうしね…。」




最後は聞こえないように呟いた





「気分転換…?」




「何でもないわ、早めに帰りなさい。」




「はい!」




裕巳は笑顔を向けると早足に部屋を出ていく




パタン…




「「はぁ…。」」




二人は同時に息を吐くと同じ事を思う





「カブト、ちゃんと裕巳の記憶は消したのよね?」




「えぇ、毒芽の事は忘れさせました。」




「なら良いのだけど…。」




「本当に良かったのですか?」




「何がよ。」




「…大蛇丸様が助けたことも裕巳は……。」





「…だから、そんな事が何だって言うのよ?」




カブトは大蛇丸が惚け続けるのではっきりとした言葉で伝える





「裕巳は大蛇丸様の事をーー。」




「カブト…。」




大蛇丸がそれ以上言うな、そう言っているようだった
そして大蛇丸は続ける




「私が気付いてないと思う?」




「…大蛇丸様…。」





「そんな感情を抱(も)って生きていける程、この世界は甘くない…。
カブト、あなたも良く分かってる筈でしょう?」





「…………。」




カブトはそれ以上何も言わない




ただ、大蛇丸の言葉は『何かを失うことが恐い』




そうカブトには聞こえた…




.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ