第二章

□21.雨との接触
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ガチャ…ギィィィィ…



雨の良く降る雨隠れの里、本堂の扉は水分を含み膨張していた為に軋んだ音を立てながら中に光が射し込む





「ごほっ! 凄い埃っぽい…。」




裕巳は口を手で押さえながら中へと足を踏み入れる




足元からもブワッと誇りが立ち、舞い上がる




両サイドには大きな本棚があり、中にはズラリと誇りがうっすら積もった書物が並んでいる




ギシ…




裕巳が足元を軋ませながら立ったのは“医療”と書かれた本棚の前





裕巳はその中から“術式医療”と書かれた本に手を伸ばす




パンッパンッ




裕巳はその本の誇りを払うとパラリとページを捲る




「………………。」




裕巳の目玉は左から右へ、だんだんと下へ下へ移動していく




文字がみっちりと記載されたページを一分もしない内に次のページを捲るとまた目玉を動かす






右腕に掛かっていた重力は左腕に移動していく




「……はぁ…。」




パタンと厚い表紙を閉じると裕巳はその本を元に戻し、その右の本へと手を伸ばす



パンッパンッ





ハラリ…





「…………。」










時は刻まれ裕巳の集中力は削がれていった





「はぁ…ないな…。」





パタンッ! と表紙と裏表紙を音を立て、閉じると裕巳は溜め息を吐く




裕巳は日が傾く時刻まで凡そ三十冊の医療書に目を通したが、それらしい回復術の記載はなかった





「どうしよう…まだ読んでない本が結構あるな…。」




今日は帰らずに明日また残りを調べてから帰ろうかと考える裕巳





「…大蛇丸様が早く帰って来いって言ってたけど……。」





ガーガー、と烏の鳴き声が聞こえてくる





本堂の中も少しずつ闇へと呑み込まれていく…




「…………。」




裕巳の様子はだんだん落ち着かなくなってきた




「…何でだろ……? …震えてる…?」




裕巳は自分の手を広げ、見てみると無意識に震えていた




この閉鎖された闇の中に居ることが恐怖に感じる





「…………!」




バンッ! と本堂を飛び出すと裕巳は走る





「ハァッ…ハァハァッ…。」





月明かりが良く届く池の近くまで来ると裕巳は肩で息を繰り返す




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