第二章

□21.雨との接触
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「何故私を…私はもう貴方達の元から抜けた! 私に構わないで!」




裕巳は空気を切るように腕を振るう




「そうはいかん…お前がこの村に滞在している理由は外敵からこの村を守る。そう、昔言っていたな?
ならばもうお前がここに存在する理由はなくなった。周りを見ろ! 己の弱さを知れ‼ お前は何も守ることが出来なかった、違うか?」





「ーーーーッ‼」




裕巳の下唇から細く、赤いものが流れた




「己だけのうのうと生き残り、何を感じ、お前は生きている?」




「…るさい…あんなところへ戻って何が得られると言うの!?
知った風な口を聞かないで‼ 私のことを何も知らない癖に…‼」




感情的に声を荒げる裕巳





「平和とは何かの犠牲の上に成り立っている。
光とは闇が存在し、初めてそこに在ることが出来る。
お前の我が儘で里を危険に晒すと言うのか?」





「…………。」




聞く耳を持たない、そんな態度で裕巳は背中を向ける




足を踏み出そうとした時、男は一言短く問いかける




「里を裏切る気か? お前が抜け忍になるつもりか?
里の裏切り者を狩り続けてきたお前が…。」





ピタリ、と足を止める裕巳





首だけを動かして男を見る




「抜け忍? 私はそんなものーーー。」





「お前に一つ、聞きたいことがあるのだがな…。」





「…………。」





「大蛇丸……と言う輩のことを知っているか?」





「ーーーー‼」




裕巳の目が見開かれる




「心当たりがあるようだな?」




ニヤリと笑う男に裕巳はワンテンポ遅れて反応する





「…さぁ? 知らない、じゃあ私…帰るから……。」





「先日木の葉隠れの里が襲撃を受けた…。」




「…………。」




「後に砂隠れの者達はその首謀者を公にした、その者は中忍試験中に砂を利用し木の葉を襲わせ…その試験会場には多くの隠れ里の忍が観戦していた…。
その情報で面白い者を見つけてな…。まさか生きていようとは…今此処で目にするまで信じてしなかったがな…。」




「…………。」




裕巳の足元の土が湿気る




「その者は木の葉の忍に目撃されているようでな…。
さて、これが奴…大蛇丸に利用された者ではなく、奴の配下だと我らが手配書を各国に情報を流せばどうなるか…。
里を裏切り、抜け忍となった犯罪者…、死罪でも文句は言えまい…忍の世界はそう甘くはないからな…。」




「…最初から全部……。」




「いいや、調べるのに苦労した…何せ奴の根城である音の里が何処に存在しているのかまるで掴めなかったからな…。」




「…………。」





「更にもう一つ面白い情報を得てな…。
大蛇丸が三代目火影を殺し損ねた際に両腕を使い物にされなくされたと…。奴は手配レベルSクラスの犯罪忍…奴に恨みを持つ者も少なくはないだろう、この情報を流せばーーー。」





男は口を閉ざす




その首筋に触れる刃がそうさせた




男の背後に立った裕巳の瞳は真っ黒に染まっている




「大蛇丸様に手を出したら……私が貴方の首を落とすーーー。」






*2015/11/18*
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