第二章
□22.拡がる曇
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大蛇丸が口を閉ざすと四人衆は顔を見合わせる
そんな彼らにカブトは出入口扉を開けながら言う
「じゃあ四人共、弟二実験室に移動してくれるかい?」
カブトの言葉を受け、四人衆は立ち上がり部屋を出る
カツカツカツ…
「…………。」
部屋に居るのが自分と大蛇丸だけになるとカブトは問いかける
「…宜しいのですか?」
「何が?」
大蛇丸が聞き返せば、分かっているだろうにと言わんばかりの表情で口を開く
「大蛇丸様は今三代目の封印術のせいで術が使えないんですよ?
今彼らを側から外すのは危険です。大蛇丸様が弱っていることを他の者達に知れ渡るのは時間の問題。反乱分子はこの里にも居るんです。
もしその者達がこの機に結託し、クーデターを起こしたらーー。」
「お前が居る。」
大蛇丸の言葉がカブトの口を閉ざした
「…!」
「そうでしょう、カブト…?」
大蛇丸が自分を信頼しているのが分かる
少しずつ、少しずつ…大蛇丸の心の変化を感じ取れるようになってきた
それをさせているのは誰か
大蛇丸の心を動かしているのは誰か
考えるまでもなかった
(裕巳…やはり君は凄い…。)
カブトはたった一人の少女の存在が大蛇丸を変えていっていることに驚いていた
その一方で自分の中で黒い感情が生まれていたことにもカブトは気付く
「カブト?」
「あ…いえ、すみません。では僕も行きますね。」
カブトは自分が今どのような表情をしているのか分からず、早々と部屋を出た
パタン…
「ハハッ…醜い…。僕は一体何を…。」
カブトは片手を顔に当てると小さく笑い声を漏らした
(裕巳が必要なのは大蛇丸様だ…僕じゃない…。)
『カブトさん!』
あの笑顔は…僕に向けられたものじゃない…
あの笑顔を作らせているのは僕じゃない…
僕の存在を証明してくれるのは…裕巳じゃない
じゃあ、何なのだろう?
裕巳にとって僕は…何なのだろう…
僕と言う存在は…裕巳にとって…
ーーーなんだ?
分からない
大蛇丸様が居なくなれば
裕巳と言う存在はどうなるのだろう…
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