第二章

□23.止まぬ雨
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音の里でも雨が降り続いていた



夏の空に反発するように降る雨





裕巳は自室のベッドの上で膝を抱え、その雨音に耳を傾けていた





『我々の元に帰ってこい。』





「…………。」





『一週間、猶予をやる。』






「……一週間…。」





裕巳は呟く




雨陸が定めた“一週間”という期限


それは大蛇丸殺害の為に与えられた時間だと裕巳は理解していた





雨陸と会った日から数えるなら、その期限まで残り六日





「六日で…大蛇丸様を………?」





ーーーこの手にかける?


今まで護ってくれた人を?




ーーーこの里に留まる?


雨陸は音の里の在りかを知っている…






考えては首を振り、自分の選択肢を打ち消していく




「駄目だ…私は本当に……。」




頭を抱える彼女の元に雨以外の音がする





ーコンコンッ





「ーーーー!」




驚き、ドアへと首を回す




ノックされたと気付くのが少し遅れると慌ててドアまで行く




「はい、今開け……。」




ガチャ…とドアを開ければそこには先程まで一緒に大蛇丸の部屋に身を置いていたカブトが立っていた





「やぁ、良いかい?」




「あ、はい…どうぞ。」




裕巳はカブトを部屋に招き入れると雨音に負けそうな声で訊ねる




「どうされたんですか? カブトさん…。」




カブトは裕巳の様子に眉を下げる





「いや、帰ってから君の様子が変…というか元気がないから、どうしたのかなって思ってね。」




「……………。」




出さずまいとしていたが、カブトには容易くバレていた




一人で抱え込んでいた不安が一気に膨れ上がり、裕巳は気が付いたらカブトに寄り添い、しがみついていた




「…………ッ…‼」




「裕巳…?」




驚きはしたものの、カブトはちゃんと裕巳を受け入れる



小刻みに震える小さな身体



カブトは優しく声をかける





「裕巳…雨隠れで何かあったのかい?」




「……いえ…すみません…大丈夫です。」




ゆっくりとカブトから離れると裕巳は笑顔を作ってみせる





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