第二章

□23.止まぬ雨
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カツカツと近付いてくる足音に彼女の意識は浮上してきた




「目が覚めたか、世斬り…。」




そこは病室ではなく、冷たい木の床に布団が引かれた上層部から自分に当てられた自室だったもう日が傾いてきたのか、蝋燭が皿の上でユラユラと揺れている
一人の部屋としては少し広く、二人部屋としては少しばかり窮屈な間取り



彼女は自分の隣に膝を曲げて座った男に視線を向けた




「…その呼び方…止めてくれない? …雨陸。」





「ふっ…此処(上層部)では皆こう呼ぶからな。
名誉ある呼び名ではないか。」




「何が名誉…? 私みたいな仕事をしてる忍が…。」





彼女は自分の傷の状態が分かっているように顔だけを天井に向ける





「ふっ…相変わらずだな…。」





笑う雨陸に彼女が問う




「貴方が私を?」




その言葉で何が聞きたいのか、雨陸は直ぐに理解する




「あぁ、お前を見張っていた。
まさかあんなことになるとはな。」





「あの時感じた視線は貴方のものだったのね…。」





「気付いていたか。」




鼻で笑う雨陸





「気配、消しきれてなかったよ。」





「そうか。」





「…で、どうして見張りなんか?
融雨幻様からの命令?」




「その通りだ、お前があの標的をちゃんと始末するようにな。」




「…どういうこと?」





雨陸は口角を上げると真実を彼女に聞かせる




「万が一にも水無月を上層部が葬ったという事実が漏れないようにな…。」





「…どういうこと…!?」




彼女は上体を起こす





「水無月の罪はな、スパイとして優秀すぎた…その能力だ。」




「………!?」




目を見開く彼女




「上層部は水無月の能力に恐れ、密かに暗殺することに決めた。
そしてその首切り刀に選ばれたのが…お前だ。」




「…意味…分からない…つまりあの人にはなんの罪も…罰するべき罪も何も、なかったと言うことなの!?」




彼女は問い詰めるような口調で声を張り上げた後、傷口を押さえた




「痛っ…!」





「そう言うことだな、だが、それは上層部の者達の間では違った。
その能力が水無月の罪であり、罰する理由となったんだ。」




「貴方、知っていたの…?」




鋭い視線を受けながら雨陸は寂々と答える





「知らなかったのは…お前だけだ。」




「ーーーー‼」




彼女は絶句する




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