第二章

□24.過去の憎しみ
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「な…何だこの女…!?」



男は後退りをした後、一目散にその場から逃げ去った




「………はぁ…。」




裕巳はカランッ、と気が失せたように剣を手から離すと溜め息を吐いた




(何言ってるんだろ…私は…。
人の罪を斬る資格なんてないのに…。)




カブトは昼間の別れ方が別れ方だったので、どう話口を切れば良いのか分からなかった




取り敢えずと、声をかける




「裕巳、助かったよ。ありがとう。」




その言葉に漸く裕巳は振り返る




「あ…いえ、そんな大したことしてませんから…。」




「……………。」




「…………。」




二人の間に沈黙が降りる




「どうされたんですか? さっきの人…。」




「あ…いや、ただの会話の縺れと言うか…ね。」





「そうですか…。」




「…………。」




「カブトさん……私、カブトさん達の元に居て良いですか?」




唐突な質問だった





「…急にどうしたんだい?」





「いえ、ちょっと聞いてみただけです…。」




ふわっ、と笑顔を向ける裕巳はとても寂しそうな顔をしていた





「…ごめんなさい、変なこと聞いて…お休みなさい。」




裕巳は頭を軽く下げ、部屋を出た




パタン…





「…………。」




僕は勘違いしていたのかも知れない


僕が裕巳に向けていた感情は


勘違いだったのかも知れない…





カブトという記憶から僕に愛情を注いでくれたのはマザー

一緒に生活をしてきた院の皆



それから直ぐ院を離れ、忍世界に入った



スパイとして他人と親しくなんて出来なかった


大蛇丸の元につけばそれはもっと、“愛”を与えてくれる存在はいなくて当たり前だった




そんな日々の中、ひょっこり現れたのが裕巳だった



裕巳は大蛇丸を想い、カブトに笑顔を向け、いつの間にか太陽のような存在になっていた


それを自分はマザーと重ねていたのかも知れない


その優しさにマザーを視ただけなのかも知れない



自分が裕巳を好きになった気持ちは…勘違いだったのかも知れない




時折その感情とは相反する黒い感情が生まれていたのを知っていた



大蛇丸が裕巳と同じ気持ちになれば、自分の居場所がなくなるかもと思った



大蛇丸の心の直ぐ側に自分が居たかった

また忘れられるのが恐かった

また存在を失う気がして…苦しかった




裕巳が何の意で“此処に居て良いか”と言ったのか分からなかったが、それを否定しない自分が居たーーー



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