第二章

□24.過去の憎しみ
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草木も眠る丑三つ時



音の里に伸びる一つの影があった




ヒュンッ ヒュンッ ヒュンッ…




空気を斬る音が静寂の中立つ




「…はぁ…はぁ…。」




その姿は額から汗を流す裕巳だった




夜、眠れない裕巳は外へ出てひたすら剣を振るっていた





「ふっ……はぁっ!」




スパンッ! と目の前に落ちる木の葉を斬る




「…………。」




裕巳は真っ二つに切れた木の葉が地面に落ちるのを見る



するとそこへ夜の訪問者が現れた




「やぁ、裕巳。」





「…! カブトさん…。」




月明かりの下に姿を現したのはカブトだった
カブトは裕巳に歩み寄る





「君も眠れないのかい?」




「…カブトさんもですか?」




二人が外へ出てきた理由は同じだった




「じっとしていると色々考えてしまってね。」




同じだった



裕巳もこうして身体を動かしているのは部屋で一人になると色々考えてしまう為だった
しかし裕巳は何をカブトが考えさせているのか分からず、問い掛ける




「カブトさん、何か悩み事でも?」




「まぁ…ね。いや、自分が何に悩んでいるのか分からない…それが悩みかな。」




「……?」




矛盾した答に裕巳は首を傾げる




するとカブトが意外な提案をしてきた




「裕巳、僕と戦ってみないかい?」




「…えぇ!?」




いきなりの宣戦布告に裕巳は驚く




「何、ただの稽古と思ってくれれば良い、クナイや術は使わない。
体術でどちらかが膝をつくまでが勝負、どうだい?
一人で剣を振り続けるよりは疲れやすくて良いと思うんだけど。」





「…分かりました。」





正直体術は苦手分野だったが、カブトの誘いを断りたくはなかったので受けることにした




(苦手でも立ち向かわないとね…。)




そんな理由もあってカブトと対峙する




二人の間に風が吹く



また木の葉がヒラヒラと舞い、地面についた瞬間、二人の足元に土煙が起こる



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