逢魔の砂時計

□君の手を
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「…………。」


何故だ…何故だ俺はまだ存在している…?


そうか…奴が俺と入れ替わったことで闇のゲームの力が弱くなったのか


一度は消えたが俺の存在は完全に主人格の中から消えなかった…


ククククッ…様ぁねぇな…
俺が仕掛けた闇のゲームで俺自身が闇に喰われちまった訳だ…


意識が留まらねぇ
支配なんて出来やしねぇ…


クソッ!


「…ボク…もう一人のボク…。」


声が聞こえる…


誰だ? 俺を呼ぶこの声は…?


闇の中に光が差した


カツン…


目の前に現れたのは


「おやおや、主人格様。
一体どうやって俺の存在を見つけたのかねぇ?」


嫌味ったらしく言えば光の存在が近付いてくる


「ここはボクの精神世界…お前を見つけるなんて容易いことだ。」


「ケッ…そうかよ、じゃあ復活した俺を消しにわざわざいらしたと?
御苦労なこったな。」


「…………。」


マリクは何も言わない


「何だよ主人格様?」


その視線が気に入らない
ギロリと闇の存在はマリクを睨み付ける


「ボクはお前を消しにきた訳じゃない。」


「ハァ? 何言ってやがんだ主人格様、俺はお前の闇。放置してどうなる?」


「そう…お前はボクの中から生まれた闇…。
怒り…憎しみ…憎悪…お前をボクの中で放置することはボクの周りで災いを起こすかも知れないと言うこと。」


「ククク…良く分かってんじゃねーか?
なら何故お前はそんなことを言う?
俺はお前の闇そのもの‼ お前が儀式で父親から受けた苦痛、憎悪‼ それら全ての闇が俺そのものーーー。」


「あぁ…ボクが父上から受けた悲しみも…お前の中に…。」


「……‼」


闇の存在は大きく目を開いた


「ボクは闇から逃げてお前に全てを背負わせた。」


「何…言ってやがる…!?
この俺が悲しみを背負っているだと…!?」


「そうだ、ボクの悲しみはお前の悲しみ…良く分かる。」


カツン…カツン…


「あ、りねぇ…俺は…く、来るな!」


近付いてくるマリクを払い除けようとする闇の存在


「もう良いんだ…ボクは遊戯とのデュエルに敗北し、闇の存在を葬り去った。
しかしそれはお前に全ての闇を背負わせ、己の罪から逃げることと同じだった!」


「何…言ってんだ、てめぇは…!?」


「ボクの闇はボクが受け止める、お前の憎しみをボクに分けろ。」


差し出される掌


「馬鹿言ってんじゃねー‼
俺は悲しみなんて背負っちゃいない‼
俺は…てめぇ等を闇に葬り去ることに悦びを感じている‼」


「それはお前が闇だからだろう?」


「な…にを!?」


「お前は孤独が好きなんて言っていたが嘘だ、お前も独りは嫌だったんだろう…?」


「………‼」


「もう良いんだ、お前はボク、ボクはお前だ。
こっちにこい、もう一人のボク…。」


「…後悔するぞ。」


「しない。」


「また人格を支配してやると言ってもか?」


「やらせはしない。」


「…フン、どうなっても知らねーからな…。」


手を伸ばす


「一つになろう。」


闇の中にも確かに光は存在した


2016/03/07
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