逢魔の砂時計

□邪念に盛り塩
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「ねぇ。」


「…ねぇってば!」


『んぁ? 何だよ宿主。』


寝惚けたような声が自分の中から聞こえてきた


時は六時、学校が終わり家に帰宅したところでバクラは宿主の獏良に呼び掛けられた


「ちょっとお前に聞きたいことがあるんだけど?」


『何だよ手短にしろよな…俺様は眠…ふあぁぁぁ…。』


「…そうだよ、ボクが聞きたいのはそれなんだよ…?」


ここでバクラはいつもの獏良でないことに気付く


『ど、どうしたよ宿主様?
笑顔が黒いぜ…?』


「お前、夜中にボクの身体使って出掛けたよね?」


『………。』


図星だった


「今日、睡魔に耐えられなくて授業中に寝ちゃってさぁ…?」


『お、おぅ…それは…良い夢みれたか?
授業中に寝るなんざ最高の夢心地だろうな! ハッ…ハハハ…。』


バクラの笑顔が引き吊ってくる


「そのおかげでボクだけ課題が皆の倍出されたんだけど、どうしてくれるのさ…?」


『ど、どいつだー!?
俺の宿主様にそんな真似した教師は!
よーし、俺様が今から倍の課題ごとその
教師を消してくるぜ!』


慌てたように叫び宿主の身体を乗っ取ろうとしたが、獏良にそれを拒まれた


キィン…!


『なっ…!?』


驚くバクラに獏良は静かに言う


「またそういうことをしようとする…。
ボクが言いたいこと分からないの…?」


『わ、分かった分かった、もうしねーよ………多分……。』


「…お前がボクの心を読めるようにボクにもお前の心が少なからず分かるんだよ?」


『おぉ…それは嬉しいね…よ、よしっ。
俺様も手伝ってやるよ! 家賃代としてな!』


「お前の手伝いなんて端から期待してないよ。」


『失礼だな! 俺様はこう見えて3000年生きてんだ!
高校生の宿題なんてチョロいチョロい…。』


余裕顔のバクラに獏良はキッチンへと足を運ぶ


「お前って邪神なんだよね?」


『あ?』


「ボクを宿主にしてるってことは殆んど幽霊みたいなものなんだよね?」


『だから何なんだよ?』


「ボクが宿題終わらせるまで罰ゲームを受けてもらうことにしたよ。」


『宿主様が俺様に罰ゲーム?
ヒャッハハハ! 罰ゲームなんてのは俺様の専売特許じゃねーの。
第一宿主がどうやってーーー。』


「こうやってさ。」


獏良が千年リングの上に盛ったものは岩塩


『ぐっ…!?』


「悪霊退散…。」


『ち、ちょっと待て宿主‼
これはマジでヤバいって‼
俺様浄化されるからぁぁ‼』


「そのまま浄化されてしまえ。」


『俺様から悪しき心とったら何も残らねーって‼』


「ウサミミくらいは残るんじゃないかな?」


『誰がウサミミだよ‼』


「じゃあ暫く反省しててね。」


『ちょ、待て…待って下さい宿主様!』


「やだ。」


獏良はバクラを無視して千年リングを置き去りに勉強部屋に向かう


『宿主ぃぃぃぃぃ‼』


バクラの叫び声は虚しく消えた


2016/03/25


「終わったよーバクラ。」

『お帰りなさいませご主人様!』

「……………………ほんとに邪念抜けた…。」

『ご主人様がいない時間を私(わたくし)廃墟に取り残された気持ちで御座いました…。』

「……よし、墓地に埋葬して来よう。」
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