逢魔の砂時計

□君のいない世界
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「クルエルナ村…。」


獏良が一人部屋で呟いた


机の上で開かれている本は大分古びたものだった


全ての戦いが終わり一週間


アテムは冥界へと旅立ち、また獏良の中に存在していたバクラの存在も消えた


バクラに身体を乗っ取られ記憶がない獏良はアテムが冥界へ還った後、全てのことを遊戯達に聞いた


バクラの正体が大邪神ゾーク・ネクロファデスの魂の一部でクルエルナ村の生き残りである盗賊王の記憶を持った存在であることを


「後の盗賊王が生き残って、それ以外の人間は千年アイテムの生け贄にされた…。
つまりあいつは盗賊王じゃなくて別の存在、世界を闇に葬ろうとしたただの大邪神だったのかな…?」


獏良はそう考える
しかしまた違う答えも見つかった


「千年アイテムには生け贄にされた者達の憎しみが宿っている…。ゾークの魂の一部…。あいつはゾークとも違う存在じゃなかったのかな、ずっと千年リングに宿っていた魂は色んな人間に渡って色んなものを見てきた…そしてボクに宿った、ただのバクラじゃなかったのかな…。」


獏良はパタンと本を閉じると腕を机の上で組み、頭を置いた


部屋が静かに感じる


部屋が狭く感じる


あいつが居た時は部屋が騒がしかった

あいつが居た時は世界が大きくみえた


あいつを感じない


本当に消えてしまったんだね


別に悲しくなんてない


いつも迷惑しかかけられなかったし

気がつけばトラブルに巻き込まれていたし

身に覚えのない怪我をしてた時もあった


知らない間にデッキが変わってたり

知らない間にデュエルリングに立っていたり

知らない間に遊戯君と戦ってたり


ボクは知ってるよ、ただ君は皆とゲームがしたかっただけなんだよね?

憎しみなんて忘れて、自分の正体がゾークなんて忘れて、皆と心を通わせたかっただけなんだよね

知ってる、君が楽しそうにデッキを強くしていたことも

君が楽しそうにデュエルしていたことも

ボクは気付いてたよ


3000年前に消えたのなら生まれ変わりなんてあっという間でしょ?


早く帰って来なよ、今度は君の姿が見えるように


人が闇の存在を怖がって忘れてもボクは忘れないから
ボクは待っているから

君のいない世界はボクには少し物足りないかな?


2016/03/20
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