第二章
□24.過去の憎しみ
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カブトは廊下に出ると大きく息を吸い、肩を下げた
断片的に見えた記憶は裕巳が雨隠れにいた頃、なんの罪もないスパイを死に追いやったものだった
それは過去の自分と全く同じだった
しかしそれは加害者ではなく、被害者の方である
自分が木の葉の院のマザーに拾われ、今まで自分が何者か分からなかった自分に名をくれ、居場所を与え、自分の子供だと言ってくれた
それから三年が過ぎ、木の葉の忍になり、スパイになった
そして岩隠れの里であの事件が起きた
自分の手で最も大切な存在であったマザーを殺めてしまった
そこに現れたのは大蛇丸、研究所に連れられ真実を知った
木の葉の“根”の者が自分やマザーがスパイとして優秀すぎたという理由で二人を相討ちに、始末しようとしていたこと
実際にマザーは死に、二人の見張りが同じ“根”の大蛇丸でなかったら自分も始末されていた
木の葉に拾われ
その国の為に命懸けでスパイ活動をし
その能力が理由で殺されさけた
何の罪も犯していない
自分もマザーも
あの一夜で全てが奪われた
やっと出来た繋がり、自分を説明出来るもの
マザーが死に、まだ自分の存在が分からなくなった
そして大蛇丸に拾われ、今に至る
木の葉に深い憎しみがあった訳ではないが、マザーという存在を奪った者達を良く思える筈がない
木の葉に拾われ、木の葉に裏切られる
カブトの憎しみが一番強いとしたらマザーを殺した者達
裕巳の姿がその連中と重なった
ダンッ! と鈍い音が廊下に響いた
カブトが壁を殴り付けた音だ
「違う…裕巳は利用されただけだ…後悔していた…。」
懸命にマザーを死に追いやった者達と裕巳を頭で引き離そうとした
「……ッ! 重なる…!」
自分の中で怒り、憎しみが沸いた
あのまま裕巳の声が聞こえなかったらそのまま絞め殺していたかもしれない
(頭を冷やそう…。)
カブトはそのまはま廊下を歩いていった
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