逢魔の砂時計

□幸せな日々
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「やーどーぬーしー。」


「何? 宿題やってるんだから静かにしてよね。」


ベッドの上で寛いでいるバクラに獏良はシャーペンを走らせながら話す


「宿題よりも俺様の相手しろよなー。」


「終わったら相手するから…。」


「…本当だろうな?」


「あ、でもご飯の準備もしなきゃ…。」


獏良はノートから顔を上げて上目になる

おかずのことを考えているようだ


「ったく、俺様と飯どっちが大事なんだよ。」


ボフッと枕に顔を埋める


「ごはん。」


「……。せめてもう少し悩んでくれよ…。」


悲しくなるバクラ


「…あ。じゃあさ、バクラ晩ご飯作ってよ。」


「…何で俺様が?」


「バクラがご飯作ってくれれば後で時間空くからさ。バクラとゲームし放題だよ!」


「…しょうがねーな。で、何が食べたい?」


「カレーかお寿司か唐揚げ。」


「小学生か。」


獏良が即答したリクエストにバクラは小さく突っ込む


「ねぇ早く〜。お腹空いた〜。」


「へいへいへい! わーったよ!」


投げやりに了承するとバクラはベッドから降りて台所へ向かう


キィィィ…パタン


「はぁぁぁ…お腹空いて方程式忘れた…。」


獏良は机に項垂れる





カチャカチャ…


「めんどくせー。カレーで良いか。」


唐揚げは油の処理が面倒臭い
寿司を家庭で作るなんて面倒臭いことこの上ない
第一金がかかりすぎる


結果、カレーである


「人参…じゃがいも…玉ねぎ…お。全部そろってるな、後は肉…。」


冷蔵庫の中を探る


「さて、作るか…あんまり辛いと宿主変な顔するからなぁ…。」


ブツブツ言いながらバクラはカレー作りを始める



約20分後…


カレーの香りに誘われたように獏良が台所へやって来た


「バクラ〜お腹空いたよ〜。」


「ちょうど出来たぜ? 宿主は宿題済んだのか?」


「うん、何とかね〜お腹が空いて集中出来なかったよ…。」


今にも死にそうな顔をしている獏良


「そりゃご苦労さん。ほら、座れよ。」


「バクラ〜ボク大盛りで…。」


「へいへい。」


バクラは皿にご飯を盛りカレーをかける


コトンとスパイシーな香り漂うカレーが置かれた


「わーい、頂きまーす!」


言うが早いか、獏良はカレーを口に運ぶ


「どーよ?」


「うんっカレーなんて下手に作る方が難しいよね! はふはふ…。」


「……素直に美味いって言えねーのかよ。」


「あ、そーだバクラ。お隣さんから昨日ゴーヤ貰ったよね?」


「…ん? あぁ、それなら酢和えにしといたぜ? ほら、宿主の分。」


冷蔵庫からゴーヤの甘酢漬を出し、獏良に出す


「………。」


あからさまに獏良が嫌そうな顔をする


「いや、ボクが言いたかったのは…いや、やっぱり良いや!
そーだバクラ! カレー作ってくれたお礼にボクのゴーヤの甘酢漬あげるね!」


ササッと自分に出されたゴーヤをバクラに差し出す


「宿主! 好き嫌いしてないで何でも食えよ!」


まるでお母さんのような言動で獏良を叱る


「だって苦いんだもん…。」


プイッと余所を向く獏良


「そんな好き嫌いばっかしてるからそんな柔いんだよ!
ちゃんと食え!」


「柔でも良いもん…。」


「…そんなだから今までからかわれてきたんだろ。」


「別に良い…。」


「良くねーよ! 俺は宿主を心配してーー。」


「今まではそうでも、これからはバクラが護ってくれるから良いもん…。」


「……ッ!」


不意だった 言葉が出なくなる


「ボクを護ってくれないの…?」


うるうると目を潤わせる獏良


「ば、馬鹿言ってんじゃねーよ!
ままま…護ってやんよ! 俺様やってやんよ!」


「わーい! バクラ大好き!」


「だ、抱き付くんじゃねーよ!」


「ねぇ、バクラ…お願いがあるんだけど…。」


上目遣いでバクラに迫る獏良


「な、何だよ!?」


「コレ! 手伝って?」


そう言って獏良が取り出したのは一枚のプリント


「…何だ? これ。」


状況が分からないバクラ


「歴史の宿題!」


「…はぁぁ!? 宿題は終わったって言ってたじゃねーか!」


「うん、コレ(歴史)以外は終わったよ?
でもボク疲れちゃった…。」


「んなもん俺様がやったら宿主の為にならねーだろうが…。」


「バクラは明日ボクが先生に怒られても良いの…?」


「………はぁ。ったくお前は本当頑固だよな…。」


「わーい! ありがと、バクラ!
デザートにボクを食べても良いよ?」


「ブフッ!」


鼻から赤いものが出た


「良いか宿主‼ そんなこと誰彼構わず言うんじゃねーぞ‼」


獏良の肩に手を置き必死に言い聞かせるバクラ


「じゃあボク近くのコンビニでシュークリーム買って来るねー!」


「聞いてんのかオイ!」


バタンッ!


「…何処が疲れてんだよ、ったく…。」


フッと自然に笑みが零れる




こんな日々を幸福に感じるようになったのは


出会ってからそんなに時間はかからなかった


こんな日々がずっと続けば良い


それは誰もが心の奥底で願っていること


2016/03/23
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