逢魔の砂時計

□温もり
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俺はゾークの一部

そして獏良の中に在る存在


お前がいたから俺様は生まれた


俺様は…それだけで感謝してんだよ



“さぁ…早く…早く集めるのだ…千年アイテムを……。”


声が聞こえる


千年リングを通じて俺様の中に主の声が聞こえる


「千年…アイテム…。」


俺様は何故千年アイテムを集めているのだろう

何故遊戯と敵対しているのだろう


何故



何故



ーーーー何故?





時々訳が分からなくなる

この世から消えてしまいたいと思う


苦しい…俺様は何なんだ?

俺様の存在は誰が証明してくれる…?




“何をしている?”


…何をしてんだ…? 俺様は…



“我の手足となり働け”


…何の為に…?



“お前は我の一部に過ぎない”


…止めてくれ


俺の存在を否定しないでくれ…‼




「ーーーーハッ!!?」


気がつくとバクラはゾークの手の中にいた


「我の中へ還るか…?」


「やっ…止めてくれ…!」


ミシミシと巨大な手がバクラの身体を締め付ける


「ぐっ…あぁぁぁぁぁ‼」


喉が裂けんばかりの声を上げる


「お前に外の景色を見せたのは誰だ?
お前に身体を与えてやったのは誰だ?」


「ぐ……はっ………。」


「お前がゆくのはぬるま湯に浸かった世界ではない…お前は常に血の上を、屍の上を行くんだ…。」


「…………っ……。」


「忘れるなーーーラーー我はーいつーーー見張ってー……。」










「ーーーーー‼」


ガバッ! と身体を起こせば直ぐ側に宿主の心配する視線を感じた


「大丈夫…? バクラ…。」


「はぁっ…ハッ…はぁっ……。」


息が整わないバクラは過呼吸にも似た苦しさを感じる


「バクラ? バクーーー。」


急に引き寄せられ獏良はバクラの中に収まった


「宿主……宿主っ!」


「…どうしたの…? バクラ…。」


痛いくらいだったが、獏良はそのままバクラの中にいた


(震えて…ううん、怯えてる…?)


「宿主…俺様は……。」


その声もまた震えていた


「何?」


「俺様は…消えたくねぇっ!
…訳が…分からないんだ…俺様は一体どうしたら…お前と…ずっとーー。」


獏良はバクラを抱き締め返した


「消えるなんて…ボクが許さないよ?
大丈夫…大丈夫だよ、バクラ。
ボクがずっとお前の側にいてあげる。」


「宿主…。」


「バクラは悪い夢を見てただけだよ、大丈夫。」


まるで子供を安心させるように頭を撫でる獏良


「…夢じゃ……ないんだ…あれはーーー。」


バクラはヒリヒリと痛む脇の痛みを起きた時から感じていた


「夢じゃない…?」


「宿主……頼みがある…。」


珍しいと思った
バクラが頼み事をするなんて


「何?」


「もう少し…このまま…。」


「…ん?」


「こうさせてくれ…。」


バクラは獏良の胸の中に顔を埋める


「…うん。」


「…………。」


「ホットミルクでも飲む? 落ち着くよ?」


「要らない…。お前だけ居ればいい…。」


「そっか。」



もうそれ以上何も言わなかった


どんな言葉をかけるより


独りになると死んでしまう真っ白な兎のような恋人に自分のぬくもりを感じて欲しかった


ボクは此処に居る


ずっとずっと、側にいるよ



2015/04/05
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