短編

□それは酷く当たり前で
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「わっかとっしくーん!!」

……天童、いい加減後ろから飛びついてくるのを止めてくれないか。

「いいじゃん別に。若利くん毎回受け止めてくれるしー。」

? まあ、体幹は鍛えてるからな。

「うーん、ちょっと違うけどまぁいいや!
若利くん誕生日おめでとー!」

ああ、ありがとう。

「と言う訳で、学食奢るヨ!」

いいのか?

「うん、誕生日なんだから好きなの選んで良いからね!」

「ん?お前らこれから昼メシか?」

「あれ、英太くんじゃん。」

そうだが、瀬見もこれからか?

「おー、今行くとこ。せっかくだし、一緒に行っても良いか?」

ああ、かまわない。

「サンキュー。んでさ、若利って今日誕生日だろ?ほい、プレゼント。」

ありがとう。……大きいな。

「前から似合いそうだなーと思ってたTシャツ買ってきた。」

「うぇえ!英太くんマジ!?」

「おい!何笑ってんだよ!」

何故天童は笑っているんだ?

「そっか…若利くん知らな…いやでも…英太くんの…センスでそれは…ブフォッ。」

「吹き出すな!悪いか!」

……まぁいい、2人にも聞きたい事がある。

「珍しいな、若利がそんなこと言うの。」

「んー?『も』って事は誰かにも聞いたの?」

ああ、大平と山形に聞いた。

「へー、その2人に聞いても分からなかった事なんだ?」

いや、色んな解釈を聞いてみようと思ってな。

「なんか責任重大だな……。で、何が聞きたい?」

どうして誕生日を祝うんだ?

「これまた壮大な疑問キタ。」

「難しいなそれ……。」

やはり、妙な質問になるのか?

「妙と言うか、当たり前過ぎて深く考えた事なかったな。」

「えーそう?わりと皆考えるもんだと思ってたけど。」

では、天童はどう考えたんだ?

「うーんとね、俺ってさあんまり誕生日って祝ってもらった事なかったんだ。」

「いきなり重い設定ぶっこんでくんなよ。」

「しょうがないじゃん。
それで高校で始めて祝ってもらって、なかなか楽しかった。
だから、ちゃんと自分がいる事を実感?する行事って感じかな〜。」

なるほどお前はそう納得したと言うことか。
瀬見はどう思う。

「えー、俺はどっちかって言うと、祝われるより祝う方が好きなんだよな。」

そうなのか?

「確かに英太くん、女子かってぐらい誕生日知ってるよね。」

「うるせぇよ。
元々誰かを喜ばすのが好きで、何やって驚かせようとか、喜ばせようとか考えるんだ。
つまり俺にしたら、誕生日は誰かを無条件に祝える日、ってとこか。」

瀬見にとっては『人を祝う日』か。
人によって取り方がまるで違うな。

「まーそんなの人それぞれだろうしな。それより学食行こうぜ。」

「頭使ってお腹減った〜。あ、そう言えば若利くん何頼むの?」

ハヤシライスを頼もうかと思ってた。

「わぁ、ブレないネ!さっすが若利くん!」



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