大好きな... old

□変化
3ページ/5ページ

幸村sid

氷月の様子が何時もと違う

違うと言うか、普通なのかよく分からない

今までは俺達を見ながら誰かを見ていた

それは全員が気づいたものだ

テニスコートに入って久しぶりにブン太の相手をし終わった所に

『幸村君、いいですか?』

幸「ああ、いいよ」

フェンス越しから氷月が俺を呼んだ

まだ首から下げている右腕が痛々しいが、彼女は自分が休んだ分の仕事がしたいと言ってきた

部長も顧問もやめておけと言ったが、彼女の強い意志に負け

重い荷物などは持たない、走るような運動も行けないと約束し、マネの活動を再開した

幸「どうしたんだい?」

『加藤先生が本の事を話したいとおっしゃています』

幸「ああー、それか」

加藤先生はこの学校の美術の教師

絵に興味のある俺はすぐに先生と仲良くなり、良い本があったら貸してくれると約束している

幸「部活が終わってからは駄目かな?」

『加藤先生は何時も早い時間で学校を出るので間に合わないと思います』

幸「そうか、分かった。今から向かうから部長に伝えておいてくれないか?」

『わかりました』

彼女は俺に背を向けると、隣のコートで他の部員を見ている部長の所へ向かった

何故だろうか?あの後姿を見た事がある気がするのは

そして、あの背中が苦しそうに見えてしまう

暫く彼女を見守った後に、俺は校舎へ向かって歩き出した

あの後ろ姿、何処かで...






白川sid

「そうか、分かったよ。あの先生なら仕方ないからな」

『はい』

「幸村が戻ってきたら真田とラリーするように伝えてくれ。それが終わったら1年は上がりだ」

『分かりました』

部長に幸村君の事を伝えた後、僕はテニス部室へ向かった

そこで、1年生から3年生の分のドリンクを作りタオルを用意してから

1年生の分は籠に入れて部室から出た

そのまま1年生が使っているコートへ向かいながら、今日の晩御飯のおかずを何にするか考える

『......』

何がいいだろうか?

歩くに連れ、インパクト音が大きく聞こえそちらに顔を向けた

自然と足を止めれば、ダブルスをしている4人の姿が目に入った

右のコートには後衛に桑原君、前衛に丸井君

左のコートには後衛に柳生君、前衛に仁王君

何度も見る組み合わせ、どちらが勝っても負けてもおかしくない

桑原・丸井ペアは、桑原君の体力を生かした半持久戦であり、前衛の丸井君が相手の出方で攻撃を加えるもの

柳生・仁王ペアは、仁王君の巧みな誘いと持ち前の動体視力で相手を調べ、柳生君の持っているストレート球で決めるもの

どちらも手の内は知っているからこそ分からない勝敗であり、味方のコンディションなどが決め手となるだろう

こうやって見ていると、またダブルスをしたくなるではないか

『はぁ...』

?「何をしている?」

『?、柳君』

後ろから声を掛けられ振り向いた瞬間に籠を取られた

柳「重い荷物を持つのは厳禁ではなかったか?」

『重くないですよ』

柳「1本500mlのボトルを20本以上を持ち、1枚62.5gのタオルを20枚以上、計11.250kg以上の重さが重くないと言うのか?」

彼の知識は何処までが限界なのだろうか?

と言うか、ボトルの重さが分かっているのは常識だとして

一般家庭で使われているタオルの重さを普通は知らないだろう

僕でも知らないから

柳「それでどうだ?約11kgは重くないのか?」

『...重くないです』

柳「フム、そうか」

柳君は籠を一旦地面に下ろすと何処からか取り出したノートに何かを書き加えていた

そんな彼を横目で見ながらも、彼らの試合は終わっていた

結果は柳生・仁王ペアの勝利だ

柳「テニスがしたいのか?」

『したくても出来ません。自業自得ですから我慢しています』

柳「そうだな」

でも、そこまでやりたいとも思わない

アリィが大人しくしているのに、僕だけがやるなんて、最低だ

自分のやりたい事は極力抑えよう、罪人に優先はないから

柳「氷月、行くぞ」

『分かりました』

彼は籠を持つと先に進んで行く

羨ましい、もし此処でテニスをしていたら何か変わっていたのだろうか?

いや、その思考はやめよう

そうだとしたら、僕はアリィに出会っていなかったから

これは1番考えてはいけない物だ、忘れよう

彼の後ろに付いて行くと、前からは幸村君が来た

幸村君に部長からの指示を言い渡した後、僕は干してあったタオルをしまいに向かった、が

『......』

この惨劇は一体何なんだ?

竿に干していたタオルがビリビリになっており、その真ん中には

「......」

女子生徒が立っていた
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ