大好きな... old

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仁王sid

隣におるだけでも不安になって

手を繋いでおっても不安になる

俺は、多分、氷月の事が好きなんじゃ

隣が心地よくて安心する

容姿はあんなんじゃが、根も優しい

無口で無表情だが、誰よりも人の事を思い

自分の事を後にするバカ

近寄りがたい雰囲気を持っておるが、それは過去があるから

暗く深い闇がアイツを蝕んでおる

それだけならまだしも

今年の夏に入ってから小学生以降の記憶まで蘇ってきておる

知らない記憶に不安を覚え、今もアイツの精神や心の闇は深く浸食し広がっておる

普通ならもう誰にかに頼らないと生きていけんじゃろう

じゃが、アイツじゃ自身が壊れておると言った

そのおかげで、見た目は何もないように思える

普段1人の時、何を考えておるか知らんが

それでも人前だと普通に接する事が出来ておる

仁「?」

机の後ろにある本棚に、1枚の写真が飾られておった

子猫の相手を終え、ベットから立ち上がりそれを本棚へ進む

写真立てに飾られておったのはどうやら小学生の写真のようじゃ

それを手にしてそのまま覗き込む

小さい頃の優真が頬を膨らませてそっぽを向き、その後ろには母親が宥めるように苦笑しながら肩に手を置いて

その隣におる父親も優しい表情で映っておった

優真とは反対の方向に顔を向ける氷月の表情はなく、両手で大切そうにフルーツジュースを持っておった

仁「プッ...」

小さくて可愛いが愛想がない

大切に持っておるフルーツジュースに嫉妬する

?「小学6年の春に撮ったそうです」

仁「氷月...」

扉は静かに開いており、そこから髪をタオルで水分を飛ばしてやってくる

隣に立っては一緒に写真を覗き込む

『南の方へ旅行した時に撮ったらしいです。勿論、覚えていませんけど』

俺の手から写真を取り、元あった場所に戻すとベットに腰掛けてまた髪を拭く

『仁王君をしっかりと拭いた方がいいです。風邪を引きますので』

仁「引いたら看病してくれるんか?」

『そうですね』

仁「アッサリと言ったのう」

自分でも分かる程に、俺の表情は崩れた

彼女の隣に座れば、色っぽいのは分かっておる

火照った体に潤った肌

赤みがある頬と下ろした髪が色気を醸し出す

中学の時の俺じゃったら確実に相手の了承も得ないで手を出しておる

じゃが、高校に上がってコイツを見た時から気になって

噂なんて一度出回ったら取り返しがつかん

じゃから、上書きするかのように

高校に上がってからは女に誘われても断った

3連覇の重りもなくなって

幸村はあの越前から楽しむテニスを思い出し

それからの部活はとても楽しくなった

参謀の練習メニューは厳しいが、それを達成すれば仲間のありがたみが身に染みる

気になっておった氷月がマネージャーになってから気になって部活に毎日来ておる

まあ当たり前なんじゃが、中学の時はつまらんかったから行かんかっただけじゃ

それから彼女の過去に触れても、心に触れる事は出来んかった

じゃが、今は入学当初に比べれば警戒心も薄れ気軽なのかは知らんが話をしたりするようになった

悩み事や心配事、不安な事は自分で言わんから俺から聞いて、答えてくれて

それだけ嬉しかったんに

なのに、3日前から続く悪夢で

今度は俺が壊れそうじゃ

手の届く所で死んでいく

そんな彼女の最後の表情は、達成感のある微笑みを残しておった

仁「?」

『拭きますね』

仁「おん」

俺の首に掛かっておったタオルが氷月に取られ、俺の背後に回って髪を拭いていく

...気持ちいいナリ

『大きな野良猫を飼っている気分になります』

仁「...なんじゃ?嫌みか?」

『いえ、素直な感想です。お気に障ったのであれば謝ります』

仁「...猫じゃったら、ずっと追ってもええか?」

『?、しっかりと学校に行ってくれるのであれば構いませんが?』

仁「...そか」

『?』

仁「何でもないぜよ」

『はい』

暫く無言のままでおると、彼女はベットを降りて何処かへ行く

1分も待っておれば何喰わむ顔をして戻ってきた

『寝ますか?』

仁「そうじゃな」

部屋の明かりを消し、寝室の明かりも消す

子猫は勉強机の上にあるクッションで2匹仲良く眠りに入る

俺は氷月と一緒にベットに入り込んで天を見上げる

氷月は俺に背を向けて壁際に顔を向け丸くなった

...寂しい

寂しいと感じた瞬間、俺は彼女の体に抱き着く

腹に腕を回して、足同志を絡めると彼女が動き出し足を解く

そして体を反転させて俺の顔を覗き込んだ
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