望まなかった未来

□5.それは選べなかった
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三日月に稽古を付けてもらって1ヶ月

三日月をも驚かせる強さに氷月は少しだけ戦闘に対しての余裕が生まれてきていた

戦闘の余裕は命を左右すると言うにも関わらず、氷月は薄気味悪い笑みを浮かべては

容赦なくじじいである三日月に一振りを入れる

刀剣男子で太刀の使い手である三日月は、主である氷月の攻撃を捌くのに精一杯で攻撃を出せずにいた

『はぁ...、休憩しようか?』

三日月「そうだな」

放たれる一振りに三日月は難なく受け止めて流したりしているものの

その一振りはとてつもない力で振られており、短刀や脇差の刀を折るには十分すぎるパワーが備えられていた

『どう?甘いでしょ?』

三日月「冗談を言うではない」

満足げな表情で氷月は困りながら微笑んでいる三日月に聞いた

実際、冗談ではない強さである

練度があり、経験があるからこそ今の三日月が対応できているレベル

1つ間違えればどの刀剣男士にも圧倒的な強さを見せつける事が可能である

これだけ容赦のない人間であったのだろうか

普段からは想像出来ない主の一面に、三日月はため息を吐き出した

『ねえ、三日月』

三日月「なんだ?」

『面白い話、しようか?』

稽古部屋に座った氷月は水を一口の見込み

氷月の隣に座った三日月は汗をタオルで拭った

『時の政府が密かに隠している殲滅部隊「時の執行人」。コイツらは人の姿をしているが、中身は化け物や検非違使、歴史修正主義者の元に居る部下よりも残酷である』

氷月の言った言葉に、三日月を息を飲みこんだ

あれ程まで老若男女を問わずに殺して行く敵がよりも、時の政府が隠している殲滅部隊の方が残酷

想像出来ないし、想像もしたくない三日月は主である氷月の言葉に耳を傾ける

『そんな「時の執行人」は全員で12人。その人達は少なくとも大きな罪を犯し、裁判に関係なく時の政府が処刑した』

三日月「!」

『大量虐殺、データの改ざん等、罪は様々である。だが決定的な証拠の発見が困難であり、アリバイも成立しているからこそ裁判は難しい』

氷月の瞳に宿るのは遠い過去を見ている様子だ

三日月は分からないでいた、どうして主がそのような話を今此処でしているのかが分からない

何か裏があるのは分かる

けど、どうして自分にだけ教えるのかが疑問であった

『そんな裁判を一瞬で解決してしまうのが「時の政府」の一部の実力行使だ。政府と仲のいい審神者を過去へと連れて行き、現場を見る。そこから決定的な証拠を持ち去り、裁判が終わる。「時の政府」がその罪人を持ち去り、政府内で罪を再確認させ、その罪人を精神的に追い詰めて弱らせ命乞いをさせる』

三日月「...外道だな」

『そうだね。そして、罪人は政府によって「体」と「魂」を別れさせ、その「体」に細工をする。そして出来上がったのが「時の執行人」。自らの罪を償うためだけに、「時の政府」からどんな汚れ仕事も受け持つ忠犬が出来上がるのだ』

「これが面白い話だよ」と氷月は立ち上がり伸びをする

手を思いっきり天に上げ腕を伸ばす

今の話を聞いた三日月の心情はとても暗い

一体、時の政府は何がしたくてそのような殲滅部隊を生み出したのか

『あー後ね。言ってなかったけど、その殲滅部隊、刀剣男士と同等の力を持ち合わせて歴史修正主義者や検非違使、時々審神者を殺すらしいよ』

三日月「審神者を?なぜ?」

『「時の政府」がいらないと判断した者は殺す。いらないと判断されるのは「本丸」の状況。つまり、「世に知られてないブラック本丸の主を殺すことで、その本丸を救う」事さ』

三日月「......」

驚きが止まらない

時の政府は執行人達をただの駒と扱っている

今までの言葉で理解した

それを止められない三日月は苦虫を噛み潰したよう表情を歪めた

『...三日月。皆を呼んでくれ。最後だからな』

木刀を持った氷月は三日月をその場に残して風呂場へと向かった

流し汗を洗い流すために

そんな主の背中をただただ見守る事しか出来ない自分に

三日月は初めて己を殺したくなった
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