望まなかった未来

□8.それは求められた事だった
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朝、薬研は移動する

三日月、鶴丸、小狐丸の3人と共に

この3人の刀は主である氷月が強運をもたらし、割と最初の方に鍛刀した通称レア刀だ

小狐丸と鶴丸はこの本丸にある綺麗な霊気が含まれた水をわざわざ沸騰させるために途中で別れ

薬研は救急箱を持ち、三日月は手ぶらのまま歩む

薬研「大将、入るぜ」

氷月は座っていた

力なく歌仙に背を預け布団の上で座っていた

その瞼は開いているも、氷月の意識は瘴気に飲み込まれほとんど無意識に近い

だが、物音や声が聞こえるとゆっくりとだが顔を向けるらしい

寝間着から除く全身を覆う白い包帯

傷は治っていない、氷月を此処に寝せて2ヶ月が経つも

体の中に残っている瘴気のせいで傷が回復しないのだ

三日月「おはよう、主」

いつも通りに挨拶をする三日月を横に歌仙は主の帯を緩める

白い寝間着から解放された身体、そこからさらに薬研と歌仙と三日月の3人で巻かれた包帯を取り払う

血液こそ流れないもその傷はまだふさがる気配もない

包帯を全て取り払うと三日月が氷月を抱えて部屋から出て行く

主が部屋から出ると岩融と大倶利の2人で部屋を綺麗にし、一期が布団のシーツを取り換えて整える

向かった先は風呂場

例えほぼ眠っているだけであっても身体は汚れる

風呂場には蜻蛉切と加州と大和守が待機していた

三日月「任せたぞ」

蜻蛉切「了解してた」

加州「任せて」

大和守「勿論」

氷月の体を3人に預け三日月はその間ずっと脱衣所で待機する

3人は氷月の髪や体を丁寧に洗って行き、湯船に浸かる事無く5分程度で上がってくる

西夏「待ってたぞ」

タオルで体を拭き上げ、ドライヤーで西夏が髪を乾かす

あの時よりも西夏が綺麗に髪を切ってくれた陰で前の髪型と一緒だ

選択は堀川と骨喰で全ての刀剣男士と主の服を洗って行く

風呂場での用事が終わるとまた三日月が抱えて元の部屋へと戻ってくる

綺麗な布団と共に薬研が薬を用意しており、鶴丸と小狐丸が待機していた

三日月「主、もう少しだ」

風呂場からのバスタオル生地の服が取り払われ、三日月がその体を立たせながら

鶴丸と小狐丸がこの本丸に流れている清い霊気を含んだぬるま湯で体を拭き上げていく

拭いた場所から瘴気が出て行き、綺麗な霊気は入れ替わるようにして氷月の体に染み込んで馴染んで行く

それが終わると最後に薬研が傷口に薬を塗り、ガーゼを当てては包帯で固定していく

足首から上へ徐々に白い包帯が全身を覆って行く

首までこれば手首まで本当に全身を包んでいた

それらが終わればようやく布団の上で座る事が出来るようになる

薬研「三日月の旦那。後は任せたぜ」

鶴丸「主、また来るからな」

小狐丸「主様に何かあればすぐに」

3人は部屋の戸を閉め出て行く

後は此処から三日月の仕事だ

此処までに掛かる時間は30分程度

最初こそ1時間掛かっていたがさすがに彼らも手際が良くなり早くなっていた

布団の上で三日月が座り、その前に氷月が座る

力のない身体は自然と三日月にもたれる形となる

三日月「主よ。もうすぐで全てが終わる。その時、必ず迎えに行くぞ」

身を預けている氷月を優しく腕の中に包み込む

首筋に顔を埋めて、あの時の腐臭はもう何処にもなく

いつもの主の香りを胸いっぱいに吸い込んでは吐き出してを繰り返しながら

体中から神気を放って氷月を包む

ピクッを体が反応をし、苦しそうにもがく

体の中にある瘴気が三日月の放つ神気に反応して逃げ出そうとしているのだ

呼吸も浅く早くなり、体中から汗が噴き出す

氷月の胸に軽く掌を当てると、ドッドッとかなり早い速度になっていた

三日月「入れるぞ」

右手で顎を捕らえ、深く口づける

そこから大量の神気を送り込むと、大きく体が反応して暴れだす

それを片腕で押さえながらも、瘴気を吐き出すまで神気を送り込む

三日月達は瘴気に溺れてしまった氷月を助ける事にした

1から本丸を作り上げ、初期刀を失い後悔しつつ、再び誰かを失う事を恐れて立ち向かった氷月

名も知らない場所に政府の命令から命の危険に晒されながらも、もがき戦い続けた子の刻

慈愛に等しかった三日月の感情は何処にもない

あるのは大切で愛おしく、独占したく失いたくない存在

そう、三日月は審神者であり主である氷月を心の底から恋愛対象として愛してしまったのだ
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