世界が違う

□生まれた日
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玉狛の夜

珍しく氷月の部屋にいる迅は

彼女が大切にしてきた猫と戯れていた

迅「どうした?」

迅が元気がないように、彼女が帰ってこなくなった日から猫達もやけに大人しい

宇佐美や烏丸、最近入って来た後輩は皆が揃って「人に慣れている」と思っているらしい

実際、初めて会った時も大人しかったのをよく思い出す

そして迅はベットに仰向けにしていると

腹や胸の上に猫達が寝転ぶのを不思議に思った

何時もは隣に座ったり、座っている迅の足の上に「撫でて」と額を擦り付けるのに

今日に限ってはそのような行動は取らず、不思議に思ったのだ

首には3匹に合わせて買った鈴付きの首輪

白猫ヴァイスには紅の首輪

黒猫シュヴァルツには蒼の首輪

茶猫ブラウンには翠の首輪

色のセンスは母親だと言ったのを思い出し

プレゼント、と言うワードから迅はある日の出来事を思い出す

首にある、ブリッジのない不思議なサングラス

今は迅の首にあるのが定番となっているが

元は氷月の物であった



氷月はデパートに来ては悩んでいた

過去に視た、可愛い後輩であるガキンチョ1号こと迅の誕生日が近づいているのだ

最上に預けられている間も何度か誕生日はあったのだが

その日は何かと理由をつけて1日防衛任務をこなしており

次には自宅で12時間睡眠をしている

玉狛の部屋で落ち着いたのも束の間

昨晩、迅に捕まった氷月は誕生日パーティーに参加してほしいとの事だった

林藤もこればかりは回避不可能であり、1日防衛任務も没収

挙句の果てには、こうしてデパートまで来て何かと物を探していた

『見つからん、分からん』

今どきの高校生が好きそうな物を知らない

氷月は高校に進まず、ボーダーに就職したからでもあり

戦闘隊員である氷月にはファッション等の知識は皆無

此処で文房具を渡そうにもなんだか気が引けると言うか

余計に自分の首を絞めるようにしてならない

結局この日もウィンドショッピングとなってしまい

地下の食品売り場で夕食の材料を買ってから帰った



迅「!(おかえりなさい)」

元気よく迎えたのは声の出ない彼であり

先ほどまで彼のためにデパートにいたのだ

『おん、ただいま』

レジ袋をテーブルに置き、今日は何を作ろうか悩んでいると

珍しく次々と人が帰って来た

木崎「先に帰っていたのか」

『今な』

木崎の手の中には四角い箱が丁寧もたれている

氷月は嫌な予感がし、リビングのカレンダーに視線を向ける

そこには何も書いてないが

机の上にあるデジタル時計を見れば

『......(あ、マズイ)』

そこにはしっかりと「4月9日」と書いてあった

小南「あ、白川さん。何、固まってるの?」

『あー、なんでもなか。何時もはこの時期に1日防衛任務が入っておったから今日はあったかと思ってな』

木崎「そうだったな」

そう言えば小南も木崎も納得したが、迅の顔色は暗くなった

それもそうだ

氷月は迅との一線を置くために会う機会も少なくしているし避けている

迅はそれい気づいて何も言って来ない

対する迅は迅で

氷月に嫌われていると思っている

嫌われているのであれば近づいてはいけない

命の恩人であり、これだけ楽しい思いをくれた

これ以上は強請ってはいけない、負担を掛けたくないと

双方違う思い出はあるが、互いが互いに避けている

一方、その様子を見ている木崎や小南や林藤は

気づいても声を掛けないのだ

察しのいい木崎と氷月の事を知っている林藤は何も言わない

だが小南はそんな距離感がもどかしくイライラする原因だと思う反面

大好きな氷月さんを迅ごときに取られないからと嬉しさもあった

けど、それでいて迅は氷月の事が好きで毎日会いたく思っている

林藤から1日防衛任務を入れる事がある聞き、過去の記憶から引っ張ってこればちょうどこの時期

だからこそ氷月が今月の9日に1日防衛任務を入れる前に先手を取った

自分の生まれた目出度い日時くらいは甘えろ

過去の氷月が迅に言った言葉だった

そうしてギコチナイ感じで誕生日は開かれ迅の好きな料理が所狭しと並んだ

家族観がある今のメンバーで盛大に祝えば、迅は喜びを隠せてないようで心から笑った

それは意外と氷月も同じだった
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