世界が違う

□自慢の後輩
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白川sid



林藤さん、忍田さんは我の対応のために本部へ行き

木崎さんと太刀川と風間は学校へ行った

もちろん、太刀川は此処から離れたくないと言ったが木崎のパワーには勝てなかったようで

そのまま病室を出て行った

残ったのは我と迅のみ

窓の外の景色は初めて見る風景で

見た事のない土地ではないが、それだけ復興したと言う意味が物語っている

それだけ今のボーダーは重要視され、信頼が厚いのだろう

それも迅達の活躍が大きいからだと忍田さんから聞いた

迅「愚痴、いいですよね?」

『ん?まあ、ええよ。好きな所に座って言い』

迅「はい」

4年も前の言葉を覚えているなんてな、そう思ってクスと笑ったら

迅は納得のいかない顔をしていた

4年も経てば見た目なんて変わるものだ

背は伸びたしその服も似合う

首あるサングラスがまだあるのは嬉しいが、少し複雑な気分だ

迅は我のベットに腰かけると我に優しく抱き着いてくる

顎を我の左肩に乗せ、少し痛むが

これを我慢じて迅が背負っていた物が軽くなるのであれば、いくらでも甘んじて受けよう

左腕は上がらんし、右腕には点滴が刺さっておるからあまり動かせん

迅の香りは前と少し変わっていた

迅「俺、ずっと待ってました」

『おん』

前と違ってちゃんと敬語が使えるし

そもそも声が出た事に喜びを感じている

迅「抱きしめてくれないのですか?」

『抱きしめてやりたいが、すまんな。左腕は絶対安静で右腕は点滴なんじゃよ』

迅「!」

『これ、動くな』

急に離れようとした彼の背に無理に両腕とも回す

するとピタッと彼の動きが止まり、その隙に離れた分だけ体を密着させた

彼の顔を自分の胸に押し付け、今の表情を見られまいと

ジクジクと脈打つように左腕は熱を持つが、関係ない

今苦しんでいるのは目の前の彼で、苦しめたのは自分だ

責任は感じている

強く抱きしめられない分、後頭部を右手で捕らえ、左手はあやすように上下へ動かす

迅「腕は...」

『これでお前さんが楽になるんじゃったら、我はええよ』

迅「でも...」

『泣け。悲しい事、いっぱいあったんじゃおう?』

迅「白川、さん...っ...」

体の圧迫感が増す

それだけ彼はため込んでおり、頑張っている証拠だ

此処は病院であるから、彼は涙を零すも声を殺す

そえは嗚咽となって彼の辛さが染み渡ってくる

過去を覗けば、辛い日々が視界に入る

誰もいない、何もない高いビルの上で毎日の時間を削り

時には我の猫を構い、時には後輩のために同僚と戦った

アフトクラトルと言う国が攻め入った時は、後輩の眼鏡少年が死ぬ未来や

あの小さな女の子が攫われる未来が見えており

それを回避するために、自分の事を敵視している人物への交渉や

自らの努力を惜しみなく使った

まだまだ情報は流れ込む

我がいなくなった時の景色はモノクロと化していた

誰が話しかけようとも何も思わず、悲しみや消失感の重さと深さに彼の心は一度死んだ

此処で長年一緒に戦っている木崎さんや小南

新しく入り仲良くなった太刀川、風間、嵐山、東、冬島等のメンバーが毎日数分来てくれた

最後には根負けした迅が皆と新しく過ごそうとした決意も見られた

しかし、我の言った事は一切守ってくれんかった事に苛立ちと嬉しさがある

「憎め、恨め」とあれだけ言って聞かせたのに、彼にはそれが一切見られなかった

それが何だか、自分の愚かさに腹が立つものだ

『なんで、恨まんかった?』

迅「...恨め、ない。あなたを、恨む、事、なんて...」

恨まない理由は何だろうか?

我には何となく分かっているが、それは迅の本来の感情ではない

前々から思っているように、これは吊り橋効果で得た感情

だからこそ、あの時の危機感がそうさせているだけであり

迅と言う人物の本来の感情ではないのだ

それをまだ、迅は気づけていない

所詮我は、臆病者だ

迅「白川さん、熱い...」

そうして迅は泣き止むと我の左腕を掴んだ

ビリッと電流が流れたような痛みに顔を顰めれば、迅はそれに気づき腕を楽に下してくれた

迅「無理は、しないでほしい。俺の愚痴、いっぱい聞いてもらわないとね」

『...ええよ、いくらでも聞いたる。そう言う約束じゃったもんな』

目を鼻を赤くしながら張り付けたような笑みが消え、彼が持つ子供のような笑みが見られた

久しぶりに会った時のあの貼り付けた笑みを忘れない

そうさせたのは我である

『過去、見たぞよ。いくらでも相談に乗っちゃるよ』

迅「うん、白川さんなら見ると思った。だからこそ、俺は未来について話すね」

『我は過去しか知らんよ』

迅「知ってる、意地悪したいだけ」

『ええよ、今なら大人しいから弄りたいだけ弄れ。じゃが、我が元気になったら覚えておれよ』

迅「それって、倍返し?」

『我な、4と言う数字が好きなんじゃよね』
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