世界が違う

□壊れた心臓
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仮眠室を何度も使っては氷月さんに会いに行く

青白い顔には呼吸器が付けられ、ベットの近くには心電図が浮かんでいる

動いている命はしっかりと確認出来るのに、未来が薄いだけで心配は増大していく

氷月さんが倒れてから3日後

ようやく目を覚ました氷月さんは手元に自分のトリガーがないと微笑んだ

その理由は分からない

よく考えてみれば俺は氷月さんに付いて何も知らなかった

好きな食べ物も嫌いな食べ物も知らない

けど、そんな事より俺は今の氷月さんの体に付いて知りたい

やましい事ではなく、真剣に

『じゃからと言って、この人数はなんじゃ。もっと減らせい』

氷月さんと関わりのあった全員が此処にいる

太刀川さん、風間さん、東さん、冬島さん、嵐山、秀二、小南、レイジさんだ

迅「無理です。氷月さんが最初から全部話せばよかったんですよ」

『...それは、ちょっと』

東「ほら、話してくれ」

『うわー、また東さんかー』

ベットで体を楽にしている氷月さんは東さんと顔を合わせると困ったように微笑む

そう言えば、あの時の起きたたてで忍田さんとのダブルパンチだったような

あ、これがデジャヴと言うものか

『はぁ、分かったよ分かった。それで何が聞きたいんじゃ?』

三輪「あなたの容体についてです」

『いきなりじゃな。あーあ、分かったから眉間に皺をよせなさるな』

氷月さんに言われ秀二は表情を戻す

そしてベットからため息が聞こえて顔を向ければ、氷月さんは窓の外を見ていた

『トリオン器官に罅が入っておるんじゃよ。大きな罅がな』

「「!!」」

『3年前に改良したトリガーは莫大な量のトリオンを消費した。あのローブは此方で言うバッグワームとシールドを常に起動状態で、孤月はトリオン消費を上げ威力と耐久を上げておった。トリオン体での負荷が掛かれば生身にも移る。常に戦争状態である近界ではトリオン体は手放せんかったんじゃ』

太刀川「けど、それじゃ罅なんか...」

『入る。トリオン消費が激しい分、我の場合はトリオンの回復能力も高かったようじゃ。それの繰り返しにより器官に罅が入り、生身に悪影響を与えておったんじゃ』

つまり、戦うたびに寿命を縮ませていたって事だよね?

どうして

風間「次の質問。あなたは迅の懺悔と墓場を探しに来たと言ってましたね」

小南「はぁっ!?」

『そうじゃな』

風間「迅の事は分かるにしろ、墓場なんて探してどうしてたんですか?」

『何って、簡単じゃろ?我は我を殺すんじゃよ』

小南「どうして!!」

『...無力じゃから。何も出来ん我が嫌いで憎いんじゃよ。じゃから殺したい。黒トリガーとなってな』

「「!」」

『だから帰って来たんじゃよ。ボーダーに新しい力を与え、隊務規定を犯した人材を消去するために』

太刀川「あんたはっ!」

木崎「落ち着け太刀川」

今にも掴みかかりそうな太刀川さんにレイジさんが両肩を抑える

力で敵わない事を知っている太刀川さんはすぐに大人しくなった

風間「最後に、あなたはトリガーを使って戦いたいですか?」

『...我からトリガーを取ったら何も残らんよ。死ぬまで掴んでおるし、死ぬまで戦ったる。我に出来るんはお前さんらの未来を守る事だけじゃ』

風間「そうですか」

『じゃが、帰れるんじゃったら。我はトリガー手放して毎日平和ボケしたい。それが、夢な』

「「!!」」

『ちょっと疲れたし、ゆっくりしたい』

その言葉を、待ってました

迅「風間さん、氷月さんは俺がしっかりと送り届けるんで」

風間「当たり前だ」

『慶、ちと休憩したらまた付き合ったる』

太刀川「!、マジで!」

『おん、ただし1日50本までな』

迅「俺の恋人に何してるんですか太刀川さん。それに氷月さんも」

太刀川「やった!」

『ただし、課題を全て終わらせたらな』

太刀川「!?」

嵐山「俺も模擬戦して貰ってもいいですか?」

『ええよええよ。個人での能力も確かめたいし、銃手は面白いからな』

嵐山「ありがとうございます!」



太刀川さんは若干納得のいかない顔で、小南はそんな体になるまで戦った事に対して怒り

他の皆はその2人の宥めるようにして出ていった

迅「何彼氏の前で別の人とデートの約束してるんですか?」

『嫉妬か?我は人をおちょくるんが大好きなんじゃよ。それに、我の時間は皆にやりたい』

そう、何時でもこの人は他人を優先する

病気じゃないかというくらいに

迅「俺だけにはくれないんですか?」

『あげるぞよ。誰よりも多くな』

迅「!」

氷月さんが綺麗に微笑みながら素で言うからトクンと高鳴る

『ほれ、お前さんの負けじゃ』

点滴の刺さって腕が俺の頬を撫でる

その手は外気によって冷たかった
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